3月11日に発生した東日本大震災から1カ月半ほど経過したが、制御機器業界でもLED照明や電源装置関連、さらに安全で環境に優しい風力発電に関するテーマなど、復旧・復興需要に絡む具体的な話が出始めてきた。震災により東京電力の福島第一原子力発電所が停止し、今後の電力需要と供給のバランスが気になるところだが、省電力・節電をテーマとしたものではLED照明が大きくクローズアップされている。
日本の照明に費やす電力消費量は、総電力消費量の約20%に当たる。政府では環境対策の一環で1930年までに国内のすべての照明をLEDなどの省エネルギータイプに置き換える方針で、今回の大震災を受け、企業に25%、一般家庭に15~20%の節電を求めている。LED照明の消費電力は蛍光灯の約半分で、LED照明に置き替われば大幅な省電力・節電に繋がる。
すでに、LED照明の分野ではパナソニック電工が今年度中に66種類のLED照明を発売する予定で、LED照明の国内売り上げを当初見込みの約2倍に引き上げる。
また、東芝ライテックも直管型LED照明を6月までに約80種類に倍増させる計画を立てている。
制御機器業界では産業用途やコンビニエンスストアなどの店舗用LED照明を展開しているメーカーが多いが、すでにコンビニ各社では照明などを中心に節電対策を実施しており、関連するメーカーではこうした需要増に備える体制を整えている。
セブンイレブンでは、使用電力量を25%削減する。約100億円を投資し、東電管内の約6000店を中心に、蛍光灯をLED照明に切り替えるとともに、省エネセンサなども導入する。ローソンは、現在1400店で店内照明にLED照明を採用しているが、今夏までに関東の約3000店、来年2月までに全店約1万店をLED照明に切り替える方針である。
非常用の発電機や電源装置関連も、今後需要が急速に高まると予想されており、電源メーカーなどもこうした事態に備え、営業担当者を配置する動きを見せている。
一方、今回の福島第一原発の放射線漏れ事故により、改めて原子力発電以外の安全でクリーンな発電が注目されている。ソーラー発電も挙げられるが、発電量が多い風力発電への期待が高まっている。
環境省が発表している風力発電の発電量試算によると、低い稼働率を考慮に入れても最大で原発40基分の発電量が見込めるという結果を出した。国内の風力発電で、約2400万~1億4000万kW分を導入できるという。また、風が吹いているときだけ発電するので稼働率を24%と仮定しても出力100万kW、さらに稼働率を85%と仮定した場合、原発の約7~40基分に相当し、風の強い東北地方では原発3~11基分が風力でまかなえる計算となる。
ただ、東北など電力需要を上回る発電量が期待できる地域がある一方、電力会社間の送電能力は現状では限界があり、試算通りに導入するのは短期的には難しいとされる。
また、風力発電を普及させるにはさらなる技術開発が必要とされているが、同省では震災復興にあたり、風力発電を含めた自然エネルギーの導入を積極提案していく方針で、風力発電に絡むパワーコンディショナやトランスなどの需要も大幅に増えることが予想される。