高性能製造装置・設備制御の高速化に向けて

はじめに

半導体や電子部品、液晶などの製造業を中心として、市場内での熾烈な競争が世界規模で行われている近年、製造業各社は製品の高付加価値化、高機能化が要求され、生産現場では製品生産において更なる高速化、多品種化、情報化が要求されている。言うまでもなく、これらは装置制御を行うPLC(プログラマブルコントローラ)をはじめとする各種装置コントローラに対する要求であり、装置制御におけるコントローラの役割は多様化している。

装置・設備の制御コントローラには、シーケンス命令を高速に実行するだけでなく、「モータ制御」「温度制御」「情報化に向けたネットワーク」といった装置・設備を取り巻くあらゆる処理を高機能・高精度化を要求されている。

本稿では、世界を相手に装置・設備の開発を行っている技術者向けに、弊社がラインアップしている2種類のコントローラの紹介とその適用事例を紹介する。
1.2つの装置コントローラ

当社では、装置コントローラとして主にラダー言語の

PLCのお客様向けに1992年から、「速い」「小さい」「賢い」をキャッチフレーズに「レンジフリーコントローラ

FA‐M3」を市場投入した。業界最高速レベルの速度と「はがきサイズ」という大きさ(現在のPLCの標準サイズ)とネットワークや位置決め、温度調節といった様々な高機能モジュールのリリースを継続し、市場からも好評を得てきた。

このコンセプトを継承し、2010年11月、さらに世界のトップレベルの装置・設備開発を実現するソリューションとしてLeading

Edge

Controller「FA‐M3

V」(V:Vitesse)を発表した。

また、PLCとは別に、各種ボードコンピュータやパソコンを使用し、C言語を用いて装置・設備の開発を行ってきた開発者向けに2004年、新コンセプトコントローラ

eMbedded

M@chine

Controller

e‐RT3をリリースした。

当社は、この2種類のコントローラを「装置・設備コントローラ」の2本柱とし、【図1】に示す通り、PLC、ボードを含め、PCボード、自製ボードやモーションコントロール、アライメントコントロールのセグメントまでを視野に入れている。
1―2.Leading
Edge
Controller
FA‐M3
Vitesse
「FA‐M3V」

2010年11月、「速い」「小さい」「賢い」で好評な「FA‐M3R」R:Revolutionは、「FA‐M3V」V:Vitesseに生まれ変わった。【写真1】【写真2】当社は、さらに「速い」、さらに「賢い」商品を提案することにした。

現在、「機能」より「価格」を重視する市場があることも認識しているが、ものづくり日本のセットメーカーは、自社装置・設備の開発でさらなる生産効率向上に向けて「高速化」「高機能化」「高分解能化」といった要求も少なくはない。

当社は、単に高速な商品を市場に出すのでなく、装置・設備開発技術者への要求課題を解決するため「開発」から「保守」までの製品ライフサイクルの「ストレス」を解消し、「安心感」を提供するために得意な「高速化」を中心にソリューションを提供する選択を行った。

装置・設備の開発の工程は、「機種選定」から「設計・開発」「評価」「エンジニアリング」「保守」があり、いずれの工程でも、当然のことながら、プログラム容量やパフォーマンス等のコントローラ資源を考慮する必要がある。

「機種選定」から「設計・開発」までの「設計工程」での設計自由度を拡大する「デザインフリー」、「評価」「エンジニアリング」「保守」の「エンジニアリング工程」でのエンジニアリング自由度を拡大する「エンジニアリングフリー」を提供する。すなわち装置・設備のライフサイクル全般の負荷を削減する「ストレスフリー」の実現を目指した。

「ストレスフリー」を実現するFA‐M3Vで採用した高速化技術は、以下の通り。

・高速化設計思想「HighSpeed
IPRS」

高速性を実現するための「命令(Instruction)」だけでなく「処理(Process)」「応答(Response)」「スキャン(Scan)」のあらゆる点からの高速性を考慮し、トータルの高速性、安定したバラツキのない制御を実現するための思想

・「Vitesse
Engine」FA‐M3専用ラダー演算エンジン:「命令」「処理」の高速化に向けて

FA‐M3Vの高速化を実現するラダー演算エンジン100KStep1msec(従来20KStep1msec)を実現する要の処理エンジンを搭載

・Parallel

Independent
Processing
System
「PIPS」:「スキャン」の高速化

ラダー命令実行処理と周辺処理を完全分離(並列動作)した新制御方式。

その他、FA‐M3Vは、装置・設備開発者への安心感に向けて以下の機能も追加している。

・一枚基板設計

シーケンスCPU故障率を削減するため部品点数を極力削減し基板一枚構成とした。

・ECCメモリ(メモリ修復機能)、フラッシュメモリ採用。

ECCメモリ採用で一過性のメモリ書き替わり時に自動修復。プログラム保存用メモリにフラッシュメモリ採用でノイズ対策も強化。

・セキュリティ機能(複製防止)

操作ログ設備・装置の制御の要のシーケンスCPUへのログイン管理機能を追加し、アクセスレベル(装置設計者~エンドユーザオペレータ)を分けた操作を可能とした。アクセスレベルを付けることで単にセキュリティを強化し開発者のメンテナンスが面倒にならないように配慮した。また、操業時の不具合発生時の早期解決に向け、誰が、いつ、何を操作したかを記録しておく「操作ログ機能」を追加した。
1―3.eMbedded

M@chine

Controller

e‐RT3

2.0

装置メーカで多く使用されている自製ボードに替わる装置コントローラとしてeMbedded

M@chine

Controller

e‐RT3【写真3】を2004年にシリーズ化した。

通常FA‐M3をはじめとするPLCはラダー言語でプログラミングするが、e‐RT3は半導体製造装置、電子部品/電子機器組立装置などの装置制御で多く採用されているVxWorks/ITRON(NORTi)/OS‐9/

WindowsCE/Linuxなどの各種OSに対応し、C言語でプログラミングを行う。自製ボード等で開発したお客様のソフトウェア資産を最大限活用することができ、かつ製造装置の高速化・高機能化や高信頼性が可能となる。自製ボードを使用していたお客様からは、いままで頻繁な部品改廃等の煩わしさからも開放され、好評を得ている。

2009年10月には、「マシンビジョン・ソリューション」コンセプトとして装置アライメントに適した商品ラインアップを行っている。画像処理ソフトウェアにMVTec社のHALCONを搭載し、カスタマイズ性の高い画像アライメントシステムを提供した。従来、パソコンとコントローラとの組み合わせで実現した構成をe‐RT31台で構成可能となり、コントローラサイズを削減、ハードディスクレスなシステム構築を実現した。

また、2010年6月には、リアルタイムLinux対応の商品もラインアップしている。オープンソフトウェアの特徴を生かし、世の中のソフトウェアを組み合わせることで、安価にかつ最新のソフトウェアを組み込んだ、業界最小のLinuxコントローラを実現している。

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