サーボモータ市場は、中国、韓国を中心としたアジア地域向け外需を牽引役にグローバルで市場が拡大している。リーマンショック以降、V字に近い回復を見せ、今年も堅調な伸びで推移していたが、東日本大震災で当座の行方を不透明にしている。サーボモータメーカー、ユーザーとも何らかの影響を受けており、堅調な外需も部品、素材工場の被災や風評被害などが懸念されている。生産などが正常に戻れば復興需要なども加わり、再び伸長局面に転じるものと見られる。製品面では使いやすさに重点を置いたチューニング操作が各社の開発ポイントとなっており、加えて高速・高精度制御、セーフティ、ネットワーク化への対応などが進んでいる。
サーボモータ市場は、2009年6月頃から急速に需要が回復、半導体・液晶製造装置分野、工作機械分野、電子部品実装装置分野、建設機械分野などの主要市場ではV字に近い回復を示し、リーマンショック前のピーク時の80%くらいにまで回復を見せていた。
経済産業省の機械統計によると、サーボモータの市場規模は、09年は台数が146万台(同59・1%減)、金額は697億円(同60・0%減)と大幅に減少したが、10年は台数が410万台(同280・8%増)、金額が1898億円(同272・3%増)と驚異的な回復を見せた。11年も10年を上回り、過去最高の可能性も予想されたが、今回の大震災により状況は変化しそうだ。
また、日本電機工業会(JEMA)がまとめている生産実績では、09年度(09年4月~10年3月)は、934億円(同32・9%減)で、10年度(10年4月~11年3月)は1390億円、同48・8%増と1000億円台の回復を見込んでいたが、10年度上期は好調であったことから、下期伸び率鈍化の中でも達成したものと見られる。ただ、11年度については見通しを公表しておらず、震災の影響がどのような形で現れるか不透明の状況だ。
サーボモータメーカーによると、震災前までは金額的に過去のピークを超えるところまでは行かないが、生産台数は過去最高ベースで推移していたところが多い。小容量タイプの増加が、台数の伸びに繋がっている。
震災の影響見極めへ
各メーカー全力で対策
ただ、今回の震災により、東北地方の電子部品メーカーや半導体メーカー、コンデンサメーカーの工場が被災、未だ完全に稼働する状況に至っておらず、一部の制御機器製品では製造できない状況にあり、サーボモータに関しても生産面での影響が心配されるが、海外に製造拠点を持つサーボモータメーカーでは、直接的な影響は少なく比較的冷静に状況を受け止めている。
サーボモータ市場は、中国など新興国の産業が好調であることで外需が牽引役を果たしている。例えば、現在のサーボモータ需要を支えている大きな市場であある半導体・液晶製造装置は、販売先のほとんどが中国や韓国、台湾で、国内向け販売は少ない。
工作機械も同様で、特に中国向けでは日系企業や中国のローカル工作機械メーカー向けへの販売が増加している。工作機械の生産額は09年に中国が日本、ドイツを抜いて世界一になった。中国の工作機械は、性能的には日本やドイツに劣るが、基本的な性能が発揮でき、価格が安ければそれで十分というニーズが多く、販売増の要因となっている。
中国のローカル機械メーカー向けでは、サーボモータに関して機能はそこそこでローコストなタイプを望むケースが多く、国内のサーボモータメーカーでも、こうしたニーズに応えるようにローコストタイプの製品を中国市場に投入している。
省エネや新エネルギー
市場も拡販ターゲット
一方、国内では省エネや新エネルギーなど、環境をキーワードをテーマとした分野で拡販が進んでいる。
サーボモータの用途は、年々拡大している。工場以外では、駅ホームの安全ドア開閉や自動改札機、ETCのゲート開閉、乗り物シミュレータ、回転鮨のベルトコンベア制御、介護ベッドの身近な日常生活の中にも採用が進んでいる。
機能面では、サーボモータメーカー各社とも、使いやすさに重点を置いたチューニング操作が開発のポイントとなっており、加えて高速・高精度制御、セーフティ、ネットワーク化への対応などが進んでいる。また、近年の機械は著しく小型・軽量化が進んでおり、サーボモータでも小型・軽量化が図られている。
機械の小型・軽量化の点から言えば、トルクの伝達・変換などの構造を排除し、サーボドライブが必要とするトルクを直接供給するようにすれば、機構が単純になってコンパクトな機械にできる。故障の発生や外的からのトラブルの要因も減らすことにつながり、コストや省資源ということからもメリットが大きい。
高速化では、速度周波数応答2・0kHz、20ビットロータリーエンコーダーの標準搭載で100万パルス/revを超える高分解能を実現して、位置決め整定時間を大幅に短縮し、高精度な位置決めや微細加工を実現している。整定時間を短縮することは、業務の効率化に繋がり機械・システムの生産性が向上する。
また、サーボを繋げば誰でも簡単にすぐ使える操作性を実現するためにセット時間を短縮できる簡単なパラメーターの設定と、オートチューニング機能を組み合わせることで、サーボ調整の手間と時間を大幅に短縮できるようになった。
各社独自のノウハウを
有する制振制御技術
低剛性への対応もポイントで、特に高速応答の必要なマシンボンダーや、低剛性メカニックを低振動で高速駆動した取り出しロボット、多関節ロボットなどで重要視されている。機械を振動しないようにしてサーボモータを動作させる技術が求められるだけに、各社とも独自のノウハウで振動を抑える制振制御技術を展開している。
環境面でも改良が進んでおり、一例としてアクチュエータの電動化が挙げられる。空気圧や油圧シリンダなどのアクチュエータは、形状が大きくコスト面からも見直しが進んでいる。
自動車車体のプレス加工の場合、均一かつ強力な圧力を加える必要があるが、油圧に比べ、サーボモータを使った電動プレスは、同期したツイン制御によって上下から静かにプレスすることが可能になる。
自動車の車体は、燃費向上と材料費削減のため軽量化に取り組んでいる。材質の薄型は、この一環であるが電動プレスはこの点からも置き換えが進んでいる。同様に射出成型機でも電動化への置き換えが著しい。
機器の小型化への対応という点では、リニアサーボモータの動向も注目されている。回転型サーボモータとボールねじとの組み合わせに比べ、推力が大きく、短ストローク移動で加減速の繰り返しなど強みを発揮できる。特に、小型で速い動きが求められている機械などで最適である。小型という点だけでなく、FPD製造などでは、パネルの大型化に対応して、ボールねじが長くなってたわむことが心配されているが、リニアサーボモータは、直接動いて移動するために、大型になっても問題なく使える。