中部地区の産業の基盤を担っているのは、トヨタ自動車を中心とする自動車産業、関連の工作機械産業だが、リーマンショックから立ち直り、ハイブリッドカーなどのエコカーも順調で、ようやく回復の兆しが見えたところでの東日本大震災発生は、調達面で影響を受けている。余分な在庫をもたない「かんばん方式」が裏目に出て、東北地方などからの部品の供給がストップ、完成車工場の組み立てラインは停止せざるを得なかった。
自動車メーカーは、今回のような地震などのリスクを分散するため、当初は九州地方に拠点を増やし、それに伴い部品メーカーも九州で発展。その次に東北地方に拠点を移していったが、その矢先に想定外の大震災が起こり、多大な損害を被った。特に茨城県の自動車向けマイコンの大きな工場が被災し、メーカーは代替品を探すのに苦慮している。
トヨタ自動車はこのほどようやく全工場で生産を再開したが、稼働率は5割程度で、下請けメーカーを含めた愛知県の雇用情勢に暗い影を落としている。国の雇用調整助成金セミナーには多くの企業が訪れ、助成金の対象となる従業員も増えている。
こうした状況下、中部地区の商社では東日本大震災による受注減少が出ているものの、それ以上に深刻なのが電子部品・制御機器など仕入商品の品不足による調達難である。特に大手メーカーの製品が入手できず、顧客から苦情も出ている。代替品での対応もメーカー選定、品質チェックなど時間がかかるため、即納ができない状況である。
中部地区の商社で東北地方に拠点があるところは少ないが、直接震災の影響を受けていなくても、自動車産業の工場操業率の低下は、部品の売り上げの落ち込みにつながっている。
ただし、部品の供給が絶対的に不足しているため、今まで取引きのなかったメーカーから、商社に代替えの部品を探して欲しいという依頼もあり、新しいビジネスに結びつく可能性もあるという。
大手自動車メーカーが必死で探しても見つからない代替部品を、商社に依頼されても、自動車の重要部品には簡単に代替が利かないものもあり、ないものはどうしようもないと諦めている商社もあるようだ。一方、自動車以外の電機、機械などの部品については、ある程度の在庫を持って生産しているところが多く、現在は部品の供給がストップしていないが、その流通在庫も5月一杯ぐらいでなくなるところが出てくる見込みで、その後のメドは立っておらず、現在、メーカーでは代替部品の生産工場を探しているという。
今回の大震災の影響は大きいが、津波に浸かったものの、建物までは壊れなかった工場の受配電関連、制御、設備、ロボットなどの注文も増えてくるのは間違いない。