関東地区のFA・制御機器流通市場は、11年3月期売り上げは昨年度に続き前年度を更新する勢いで推移していたが、今回の東日本大震災で急ブレーキが掛かった。現状では3月期決算の商社震災の影響は軽微であるが、今年度以降への不安感を強めている。
現状は受注先行で、「日ごとに受注が増加している」(東京・秋葉原の大手制御機器商社)の言葉に代表されるように、受注は増えるものの販売するものが限られ、売り上げ計上が思うように出来ないのが実状だ。今後、仕入れ先メーカーの生産がどこまで回復するかの動向に注視しているが、5月の連休明け頃までには、状況判別がはっきりするものと思われる。従って今は、販売製品が整うことと、販売先が早く動き始めることを待つ状態と言えるが、その時に備えて準備を進めている商社も多い。
東北地区では岩手・宮城・福島県を中心に、社会インフラ施設や工場などが津波で流されたり、壊されたりして大きなダメージを受けている。このため、これらを復旧したくても、対応してくれる盤メーカーや機械メーカー、さらには商社も製品が不足気味であることから営業活動が停滞気味と言われる。逆に、こうしたところへの対応ができるところは復興需要をすぐに営業につなげることができる。今はものを売るよりこうした情報収集をこまめに行い、品物がそろった時に備えておくことも必要なことと言える。
海外メーカーも、日本市場での品不足に対応して切り替え需要の開拓を意欲的に進めようとしており、「商社が供給選択のイニシアチブを握る状況が生まれている」(東京・秋葉原の電子部品商社)と言う。円高基調もあり、海外メーカーにとっては日本市場開拓の追い風ともいえる。
また、環境・エネルギー関連市場への取り組みを強める動きも目立つ。東京電力管内は夏場の電力不足が懸念されており、照明の消灯、空調・エレベータの使用自粛、時差勤務の実行などが取り組まれているが、電力消費を減らすとともに、再生可能エネルギーの活用が大命題と言われている。
省エネでは、電力使用監視関連機器の導入、LED照明への切り替え、インバータや省エネモータの導入などが取り組まれている。再生可能エネルギーでは、ソーラーや風力、電気自動車のインフラ関連などでのビジネス拡大に取り組んでいるところが多い。
今回の震災がこうした取り組みを大きく後押しし、工場などものづくり現場だけでなく、ビル内のエネルギー使用実態を分析し、省エネにつながる機器の提案販売や、将来的には家庭まで巻き込んだビジネスチャンスとなる可能性もある。
一方、商品や市場など取り巻く環境が大きく変化するなかで、ソリューション提案の重要性はますます高まっている。ここでは、営業社員のスキルアップが重要となり、社員教育の充実が求められる。FA・制御機器メーカーでも20年ほど前までは商社社員の教育を意欲的に行っていた時代もあったが、このところなくなっていた。しかし、こうした市場の変化に呼応し、再び教育を始めるメーカーも出て来ている。ある意味で商社は社員一人ひとり支えているだけに、社員のスキルが上がることが、強い商社を構築する第一歩と捉える考えが浸透してきたとも言えそうだ。