昨年から今年にかけ、制御機器製品の原材料となる銅や鉄、樹脂類の高騰が続いていたことから、昨年末から東日本大震災が起こる直前まで、産業用トランス業界では一部で製品値上げの動きも見られたが、震災前後から銅価格などが落ち着きを見せていること、さらに震災の復旧・復興需要への対応を優先的に捉えるメーカーが多く、トランス製品の値上げは見送られる模様である。
トランスの主材料である銅は昨年キロ当たり700円から800円まで上昇、今年に入ってからは800円を超えたが、震災前後から相場価格が落ち着きを見せ、現在は800円から830円の範囲で推移している。
鉄の価格も昨年はトン当たり6万円を超え8万円まで上昇した。しかし、こちらも今年に入って8万円台で落ち着いており、急上昇の動きは見られない。
石油化学製品も原油価格が値上がりしていることから、今年に入り樹脂類が約10%から20%ほど値上げされている。
トランスの材料に使用される石油系製品では樹脂のほかにワニス、テープ類などがある。ワニス価格は昨年の倍弱、テープ価格は昨年の約2・5倍とそれぞれ値上げされているが、トランスメーカーでは主材料である銅、鉄の価格が落ち着いていることと、震災の復旧・復興需要への対応を優先的に考えていることから、早急な製品値上げは行わない状況になっている。
また、あるトランスメーカーでは主力のトランスの値上げは行わず、電源装置などそのほかの製品値上げは実施する予定という。
さらに、そのほかの制御機器製品も震災前まで原材料が高騰していたことから、一部で値上げの動きも出ていたが、震災が起きたことで現在は大きな値上げの動きは出ていない。
一方、制御機器の供給面に関しては、6月頃までは部品の調達ができているメーカーが多く、6月までの生産に問題はないとしているが、7月以降についてはよく分からない状況になっている。
加えて、機器に使用されるマイコンも国内外ともに圧倒的なシェアを持つルネサスエレクトロニクスの主力工場が被災により生産を停止していることも最大の懸念材料となっている。
ルネサスでは、6月から一部で生産を再開するものの、本格稼働は未定の状態で、今後自動車のみならず、家電や携帯電話の生産まで支障が出てくる可能性もある。
制御機器メーカーでは、納入顧客となるメーカー、さらにその先の末端ユーザーの動向もチェックしながら、自社の製品を供給していく体制が必要となっている。