世界最大の国際産業技術見本市「ハノーバー・メッセ2011」が、4月4日から5日間、ドイツ・ハノーバーで開催された。世界的にエネルギーや環境問題への関心が高まる中で、同展でも省エネ・効率向上に繋がるものづくり技術や、再生可能エネルギーソリューションなどを中心に、過去最大規模での展示となった。
今年のハノーバー・メッセには、過去10年では最高の世界から6500社以上が出展した。来場者も、展示内容がほぼ同じである09年より10~15%多い世界65カ国から約23万人が来場した。特に海外からの来場者は約6万人と09年より30%ほど増えている。
同展は「産業オートメーション」「ロボット技術」「エネルギー・テクノロジー」「産業用部品」「モーションコントロール」「フルード・パワー」など13の専門展示会で構成されており、今年のテーマはコスト効率、プロセス効率、資源効率などを進める「Smart
Efficiency」。日本でも東日本大震災による原子力発電所事故からエネルギー問題への関心が一段と高まっているが、同展でもエネルギーと資源の無駄のない利用・保全、生産プロセスの最適化、費用効率の高い経営方針などを組み合わせることの重要性を前面に出した展示となっていた。
世界経済は08年の金融危機から徐々に立ち直りつつあるが、特にドイツ経済の回復は目覚ましい。中国や北米向けを中心にした輸出が堅調に拡大しており、10年12月期の売り上げも30%前後増加している企業が多い。
この背景には、エネルギーや環境などの課題をものづくり現場だけの問題として捉えるのではなく、第1次産業から3次産業までの幅広いすべての産業を対象にしたソリューション提案の取り組みがある。日本もドイツも外需が経済を牽引しており、国内産業の空洞化の危険性を持っている。しかし、ドイツ経済が好調な背景の一つに対象とする市場への視点の広さがあり、第2次産業の製造業にこだわらない姿勢がある。同時に、国際標準規格対応などにいち早く取り組むスピード感も大きい。
各社の展示もこうした市場の流れを反映して、エネルギーや電源、リモート監視関連などが目立った。
電源ではスイッチング電源やUPS(無停電電源装置)で、高効率でインテリジェント機能を搭載し、バッテリーの残量や過負荷状況などを通信によって逐次把握できる製品が多かった。ブレーカーの機能を内蔵したスイッチング電源も展示された。これらとワイヤレス通信、リモート監視装置などを組み合わせることで、よりきめ細かなエネルギーの監視とコントロールの実現を目指している。
省エネに繋がる照明として普及が進んでいるLED照明に対応し、LEDのSMT(表面実装)に使える低背・コンパクトな端子台が出展されており、今後日本市場でもリリースされる予定だ。
風力やソーラー発電用のパワーコンディショナー向けや、ロボット向けのコネクターも目立った。
特にロボット向けではノイズや耐久性、保護構造に配慮した設計に力点が置かれている。
そのほか、工場やデータセンターの省エネや熱対策を進めるラックソリューション提案も行われ、エネルギー問題と一体となった取り組みをアピールした。
「エネルギー」と「あらゆる産業」が対象という視点から自動車産業向けの製品も多かった。
日本では充電スタンド向けの機器で取り組みが進んでいるが、ハノーバー・メッセでは、これらに加え、自動車の運転席パネルとしても使えるモジュール式コントローラがセンサーメーカーから展示され、裾野の広さを感じさせた。
一方、オープンネットワーク団体ではプロフィバス、ODVA、イーサCAT、PLCopen、サーコス、FDTグループ、OPC、セーフティネットワーク、IOリンク、AS―iなどの団体が展示を行った。
特にプロフィバスは、累計出荷台数3560万台突破の実績を背景に、機器ベンダーの協賛出展もあり、FAからPAまでの幅広い実績をアピールしていた。
なお、来年のハノーバー・メッセ2012では、メトロポリタン・ソリューション分野を更に強化することになっている。日本でも大震災以降、電気の使用量削減への取り組みが強化されているが、同展でもこれまで以上に産業技術とイノベーションを網羅した「Industrial
Green
Tec(環境保全技術)」の展示を行うもので、全産業を網羅したリサイクル、廃棄物処理、大気清浄、浄水などに焦点を当てる。
工場の省エネ化が強く取り組まれているが、こうした取り組みが全産業に広がることで、新たな市場創出に繋がってくることが期待されている。