盤用機器メーカー、生産正常化へ懸命 JSIA一部機種で納期長期化の恐れ電線・コンデンサは回復方向 納期遅れでお願い通知

配電制御システム用機器類の生産は徐々に回復方向にあるものの、配電制御システム各社は配電盤・制御盤などの生産に支障をきたし納期回答ができない深刻な状態が続いている。機器メーカーは半導体、コンデンサなどで代用部品の調達に取り組む一方、自社製品の代替機種の提供に注力し一刻も早い生産正常化を目指しているが、部品入手難が続いている一部機種では供給能力が大震災前の状態に戻るのは早くても10月以降の見通し。12月にかかる可能性もある。こうした事態を重視した日本配電制御システム工業会(JSIA、盛田豊一会長)は、関係団体などに納期遅れの理解を求めている。
配電制御システムには、気中開閉器、断路器、油遮断器、ヒューズ、進相コンデンサ、リアクトル、変圧器、指示計器、保護継電器、変成器、電磁接触器、電磁開閉器、配線用遮断器、漏電遮断器、無停電電源装置、モータ、PLC、インバータ、表示器、温度調節器、カウンター・タイマー、リレー、センサー、変換器、操作用スイッチ、避雷器、電線、端子台、配線ダクト、配線資材、コネクター、ブスバーなど多くの部材・機器で構成されている。

受電盤、配電盤、分電盤、制御盤、操作盤などにより構成機器は異なるが、ひとつでも部材・機器が不足すると生産はできない。

東日本大震災により電線、コンデンサ、半導体・マイコン、コネクター、工業用薬品などの工場や製造協力会社が被害を受けたため、直接間接的に配電制御システムの生産に支障をきたしている。

部材や機器の生産見通しは、電線は6月から供給がほぼ大震災以前に戻るものと予測されている。コネクターも同様な方向にある。コンデンサは日本ケミコン高萩工場が生産を再開するなど供給体制が改善しており、8月にはほぼ正常化する見通しにある。

こうしたなか、半導体やマイコンを搭載する盤用機器が最大のネックになっている。半導体・マイコン大手のルネサスエレクトロニクスの那珂工場が生産再開できないため、PLC、表示器、インバータ、モータ・コントローラ、リアクトル、温度調節器、カウンターなどの生産に影響を与えている。

同社では8月末から那珂工場の生産再開品の供給を開始し、10月末にはファンドリーと自社他工場の代替生産を合わせ、供給能力を100%に回復させる構想を描いている。

しかし、マイコンは自動車向けが最優先されるため、産業用に供給されるのは11月以降の可能性がある。

盤用機器メーカーは半導体・マイコンの在庫を5月~6月まで確保していると見られるが、それ以降は在庫の払底により極端な生産縮小を余儀なくされる。その最悪事態を回避するため、機器メーカーは採用部品メーカーの生産確認、製品の設計変更、代替部品採用の検討などに取り組むと同時に、全製品の需要動向を判断し特定シリーズに重点を置いて生産、代替品として提供するなど、全力で供給不安の解消に努めている。

こうした懸命な取り組みを行っているものの、大震災前の生産量が確保できるのは早くても10月以降になりそう。とくに、マイコン搭載機器は他のマイコンに変更するにもソフト変換やバグ対策の作業に相当の時間がかかることから、現用マイコンの入手見通しと代替の両睨みで進めざるを得ない。生産の正常化は12月との予測も出ている。

配電制御システム各社にとり、部品・機器の欠品は生産が不可能になることから入手に神経を集中させている。また、顧客への納期遅れの説得にも全力で取り組んでいる。

日本配電制御システム工業会ではこの部品・機器の入手困難な状況を重く見て、「東日本大震災に伴う納期遅れ等についてのお願い」文を関係団体に配布した。

内容は、「配電盤類に使用する電線をはじめ半導体、電解コンデンサ、コネクターなど使用する各種部品類について入手困難な状況が続いており、完全な納期対応となるまでの条件整備が整わず、納期対応でご迷惑をお掛けすることも懸念される」とし「お取引各位におかれましても、サプライチェーンの回復状況などを鑑み特段のご配慮・ご支援をお願い申し上げます」と結んでいる。

こうした要請に対し、電気設備の団体である日本電設工業協会(林喬会長)は5月6日、ホームページ上に文章を全文掲載し、周知を図っている。

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