需要が拡大している空調用途では、不可欠である力率改善DCリアクトルや零相リアクトルと容量性フィルターを1つのユニットにしてフィルターパック化して標準で装備し、配線工数と配線数の削減、省スペース化の実現を図っている機種もある。特に今後の期待市場である海外向けでは、グローバルスタンダードともいえる縦長スリム形状で、保護構造を重視した機種開発を進める傾向が強い。
ユーザープログラム機能を搭載したオプションカードや、簡易PLC機能を内蔵することで、パソコンを使ってインバーターのカスタマイズ化が図れる製品も登場し注目されている。インバーターを含めた、機械・装置の付加価値向上と周辺機器の簡略化にも繋がる。
最近は、USBコネクタをインタフェイスに採用したインバーターが増えている。パソコンからインバーターのセットアップソフトウェアを起動させて設定の支援を行ったり、高速グラフ機能によるサンプリング、ユーザープログラムのコピーユニット機能などが活用できる。さらに、ラインシステムなどでベクトルインバーターとシステムコントローラーの演算制御部分を統合化した新コンセプトの商品も登場した。これによって、ベクトル演算やライン全体の協調制御を集中処理することが可能になるとともにネットワーク間の通信無駄時間の排除や、制御盤への実装スペースの削減にもつながるなど大きなメリットが生まれる。
インバーターの長寿命化に向けて、コンデンサーや冷却ファンなどの部品寿命の長時間化設計も進んでいる。特に空調ファン、ポンプなどに使うインバーターは設置するとリニューアルするまでの期間が長く、より一層の長寿命製品を求めている。各メーカーとも主回路のコンデンサー寿命は10年前後を目安にしているが、15年の長寿命をアピールしているメーカーや、インバーター劣化診断システムサービスをビジネスとして展開しているメーカーもある。
静音化では、キャリア周波数を高くして低騒音運転を行える機種もある。素子レベルの開発も各社で進められてきており、最近発表されたものではマグネットやブレーカーに影響を及ぼさない製品などもある。
ネットワーク化も、RS422/485通信は各社標準で内蔵しているが、オープンなネットワークにもオプションカードの装着で可能になってきている。
セーフティ機能の搭載も大きなセールスポイントになってきている。従来、地絡保護や瞬時停電時の自動再始動などに対して、コンタクターなどを周辺配置して対応するのが一般的であったが、この機能をハードワイヤベースブロック内蔵で、安全規格のEN954―1のカテゴリー3などに対応させた。
誤操作などを防ぐためにインバーターにパスワードを設定して、パラメーターの読み出し・書き換えを制限できる製品もある。メーカーが、出荷後の調整をできないようにする狙いもある。
インバーターの効率をさらに高める半導体として、SiC(炭化ケイ素)の開発が進められている。現在のSiC(シリコン)半導体に比べ電力損失が約70%抑えられると言われている。現在はサンプルベースであるが、省エネ化推進から量産化が前倒しされる動きもあり、早ければ12年頃にも採用が本格化する見通し。
世界的にインバーターの未使用の用途はまだまだ多く、エネルギー効率活用の点からも市場拡大への期待はさらに膨らみそうだ。