近年は、地球温暖化対策から省エネ化対策が顕著であるが、温度調節の分野でも求められている。
工業炉や食品機械などでは、予熱管理や待機電力などが生じるが、この効率化が出来るかどうかで大きなエネルギー低減効果に繋がる。これの実現へ通信機能の搭載も一般化してきた。イーサネットやModbusに対応し、PLCやコントローラなどの装置間のネットワーク化を図っている。
温度管理を装置ごとに連携して制御することで、装置ごとに最適なタイミングで温度調節が可能になり、余分な電力消費などが防げる。ここでは、イーサネットなどのネットワーク通信を駆使した制御が大きな役割を果たす。イーサネットに接続できない機種でも、ゲートウェイ機能を内蔵し容易にネットワークを構築できるタイプもある。
さらに赤外線通信で簡単にセットアップでき、各種パラメータの読み書き、CAV形式でファイル保存などの便利さが増している。光通信機種も発売されている。
一方、高度な温度制御要求に対応するため、目標温度変更時の時間短縮、外乱発生時の整定時間の短縮、安定性の向上、目標温度への追従性向上、立体の温度の均一性向上などが図られている。機能の向上と同時に操作がしやすく使い勝手の良さが追求され、汎用標準品のほかボードタイプ、モジュールタイプ、特殊仕様品など製品幅が広がっている。特にモジュールタイプは、視認性が高くオペレーターのミスを防ぐほか、集中管理がしやすい特徴を持つ。警報、偏差値、測定値に連動したり、表示色を固定することで、到達信号の判別に利用するといった多様な使い方が可能になる。
温調ボード、シーケンス制御とプロセス制御を組み合わせたシステムボードなども開発されている。温度調節器(計)のパラメータ設定や管理などを、パソコンで行うことも一般化している。
温度調節器(計)のパネル前面は、PV(測定値)表示部、SV(目標設定値)表示部、LCD表示部(SVNo・出力・チャンネル・各種設定パラメータなど)、ステータスランプ表示部(制御動作非実行・勾配制御実行・手動調整実行・リモートSV実行・イベント出力・外部制御出力・外部SV切り替え設定・通信モード・オートチューニング実行・調節出力モニターなど)、キースイッチ(画面変換・変更設定パラメータの選択・数値の増減・数値データの登録・手動調節モード切り替えなど)、赤外線通信部があり、高度な制御設定を容易にしている。
制御演算にはPID(比例・微分・積分)設定で制御性を向上させているが、ファジィ推論、ニュートラルネットによってPIDをベースにより理想に近い温度制御を可能にしている。また、繰り返し運転で制御対象をより深く把握し制御の緻密化を高めている。
熱電対や測温抵抗体などのセンサーからのマルチ入力による温度制御が増加しており、入力種別によるマルチ化が進んでいる。直流電圧、直流電流にも対応できるようになっており、湿度や圧力のアナログ量の制御を始め、タイマー動作、ヒータ断線検知・警報、操作端短絡検知・警報機能、さらに多点制御、カスケード制御、比例制御が可能になり市場拡大につながっている。
温度管理はセンサーで計測し、調節器で制御演算し、アクチュエータで出力する制御系のループ。そのため温度管理でも「計測」「制御」「監視」は三位一体で構成されており、最適な機種選定が必要である。このところ温度調節器(計)メーカー各社は、高品質な温度制御を、顧客別に実現するソリューション提案型営業を強化している。
温度調節器(計)だけでなく、熱電対・白金測温抵抗体・温湿度センサーなどの入力機器、ソリッドリレー・電力調整器・サイクルコントローラの出力機器、ソフトウェア・各種警報器などの周辺機器もそろえながら、用途に最適な温度制御を提供している。また、汎用タイプでありながら、高機能な温調ニーズに応えるため、アナログ入力タイプや三相ヒータ断熱検出機能などを搭載し、圧力、流量、レベル、湿度、重量など、温度以外の制御にも使用できるタイプも伸長している。このほか、配線作業の効率化を図るため、欧州タイプの圧着端子レス端子台を搭載するメーカーも増えている。
温度調節器(計)市場は、今後ますますグローバル化が進むものと思われ、これをサポートする体制も重要で、各社ともWEBの充実や販売代理店の拡充などでサポート面の充実に取り組んでいる。開発面では「簡単・安心」をキーワードに温度制御技術の向上が図られている。