国内製造業の海外シフトが進んでいるが、電気制御機器業界もグローバル化対応が求められている。一部の製品・企業では、こうした動きに連動した取り組みが行われているものの中堅以下の専業メーカーが多いこともあり、対応が遅れ気味となっている。また、コンピューターなどIT技術が製造現場でも大きなウエイトを占めつつあり、従来のハードウェア中心からソフトウェアやエンジニアリングなどの割合も高まっている。ものづくりの基盤技術を支えている電気制御機器産業が、今後の成長に向けた新たな方向性が求められている中で、日本電気制御機器工業会(NECA)は、将来ビジョンを打ち出し明確化した。
電気制御機器の輸出比率は、NECAの2010年度出荷統計では、42・3%と過去最高となった。これに海外生産・販売(OUT―OUT)を加えると日本の電機制御機器の約半分が輸出といえる。海外生産が顕著に進んでいるリレーは輸出比率51・1%と最も高くなっているが、リレーメーカーのほとんどが海外生産を行っており、製品の一部に海外生産・輸入(OUT―IN)があるものの、70%前後は外需と見られる。これに対して専業メーカーが多い操作用スイッチや端子台、表示灯などは輸出比率が25~30%と全体比率よりは低くなっている。これらの日本メーカーは海外生産を行っているところも少ないことから、内需依存率が高いといえる。
しかし、製造業の海外シフトが年々強まる中で、日本の電気制御機器も、従来の欧米メーカーに加え、中国、韓国、台湾メーカーなどのグローバル企業との競争がますます激しくなってきている。同時に電気制御機器の国内市場も成熟化傾向を強め、市場の伸びが鈍化しており、今後の市場拡大への施策が求められている。NECAでは電気制御機器を魅力ある産業として成長させるための「将来ビジョン」をこのほどまとめたが、この中では、事業ドメインの拡大を最大施策として挙げている。
NECAの現在の製品ドメインは、制御用リレー、操作用スイッチ、検出用スイッチ、制御専用機器、PLC・FAシステム機器の大きく5品目であるが、今後20年度までの10年間を3つのステップに区切り、拡大していく。
製品品目は、海外の動向なども研究しながら、サービスなども追加するなど検討を加えていく。並行して、ハードからソフトやエンジニアリングの割合が高まりつつある中で、こうした領域の企業への拡大を検討し、安全機器ユーザーや健康・医療まで対象視野に入れている。また、地域も急速な海外シフトが進む中で、海外情報収集も含めて海外政府機関・事務所などに活動領域を広めていくことも重要としている。
NECAではすでに、セーフティアセッサやセーフティベーシックアセッサ制度のアジア地区への普及活動に取り組んでいるが、地域拡大への一環として位置づけられる。電気制御機器を取り巻く環境は、市場・生産のグローバル化だけではなく、環境、安全、標準化、さらには少子高齢化など数多くのテーマがあり、これから担う役割も大きい。国内外に電気制御機器の存在と使命をアピールしながら、新たな発展へ地道に取り組んでいくことが求められている。