PD(プログラマブル表示器)、表示灯、表示機器などの表示関連機器市場は、国内では半導体や液晶製造装置などの民間設備投資や社会インフラ投資が回復したこと、外需では中国などアジア地域を中心に拡大したことで大幅に増加している。PDは工場でのトレーサビリティやエネルギー使用量の「見える化」などが進展していることから一層重要性を高めており、先行きへの期待も高い。最近では、表示器と高度化した各種制御機器をダイレクトで接続し、機器の有効情報を最大限に活かすソリューション・システムも注目されている。新エネルギー関連やスマートグリッド関連など新しい市場も見込まれており、内・外需でさらに市場拡大が続きそうだ。
PDは各種コントローラの稼働監視やモニタリング、エネルギー使用量の表示、さらに制御指示などを行うタッチパネルディスプレイとして、急速に需要が拡大している。最近では各制御機器と直接通信接続することで、各制御機器の情報を「見える・活かせる化」し、有益な情報を膨大に伝達することも可能となり、機器の有効情報を最大限に活かすソリューション・システムとして注目され、市場を拡大させている。
自動車生産や、FPD(フラットパネルディスプレイ)・半導体製造装置分野では非常に多くのPDが使用され、市場を牽引している。さらに食品機械や包装機械、工作機械などにも、主力需要分野として数多く使用されている。
日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、2009年度のグラフィック表示器の出荷金額は約300億円まで落ち込んだが、10年度は前年度比50%増の約450億円とV字回復を見せている。これにNECAの非会員メーカー分を加えると、500億円前後の市場を形成している。
PDのグローバル市場規模は、約2500億円と見られており、日本メーカーのシェアは20%となる。市場規模の大きい欧州や北米などで欧米のメーカーが高い実績を有していることになるが、最近はアジア市場が大きく拡大して、日本メーカーの伸びも著しい。加えて、台湾や中国、韓国メーカーもシェアを上げつつあると言われている。高機能・高価格の日本や欧米製に対し、台湾や中国メーカーは単機能・低価格をポイントにして浸透を図っており、今のところ棲み分けが行われているようだ。
日本も従来国内需要が市場を牽引してきたが、中国、韓国、台湾などのアジア地域を中心に外需が大きく伸びており、10年度では約半分を輸出が占めている。FPD・半導体製造装置分野、工作機械関連などがアジア市場で生産を拡大していることが、PD市場拡大への追い風になっている。
国内市場も同様に、一昨年後半から半導体関連、電子部品関連での設備投資が復活、自動車関連、工作機械分野なども徐々に動き出したことから需要が急回復している。一時は需要に供給が追いつかない状況も生まれたが、その後平常に戻り今年に入ってからも依然として堅調な拡大基調で推移している。3月の東日本大震災発生で一時供給不安が生じ、PD各社は機種の絞込みや代替部品への切り替えなどの対応策を迅速に行った結果、現在のところ一部を除いて大きな影響は出ていない。
PDのこうした成長傾向は、今年も持続するものと見られ、特に中国、韓国、台湾を始めとしたアジア地域はさらに拡大し、外需比率を高めそうだ。
国内では前述の工作機械、半導体・FPD、電子部品実装機、自動車関連に加え、食品・医薬・化粧品の3品業界や包装なども堅調な動きを見せている。トレーサビリティの徹底化や安全な製品を提供するために、工場の「見える化」が進んでおり、PDの大きなアプリケーションとして成長している。食品向けトレーサビリティ対応生産時点情報管理タイプは、タッチパネル付き表示器でポカミスを軽減し、工程ごとへの部分導入ができることが特徴となっている。
新エネルギー分野も原
発事故で一層期待高まる
新市場のひとつとして期待されている太陽光発電や風力発電、燃料電池といったクリーンエネルギー・新エネルギー分野も、数年前から具体的な案件が動き出してきたが、東日本大震災による原発事故で一層期待が高まっており、今後PDの主力分野となりそうだ。
また、最近では省エネ・コストダウンの観点から工場やビルなどにおいて、エネルギーの使用量を「見える化」し、効果的な監視・管理を行うシステムとして、急速に需要が拡大している。特に、省エネ法に伴い、電気使用量管理がさらに厳しくなっており、無線型電力監視表示器は、持ち運ぶことができ計測したい個所へ簡単に設置することができる。設置工事の必要がなく、電力計は設置場所に困らない無線内蔵タイプを採用している。さらに、電力使用量の推移がその場で誰でも見られるという利点もある。
PDのサイズ別台数では、画面サイズ100ミリ以下の小型タイプが、ここ数年増加傾向であったが、半導体・FPD製造装置関連などの増加もあり、画面サイズ200ミリ以上の大型タイプや同100ミリ以上の中型タイプの割合が高くなっている。この結果、販売価格の高い中・大型タイプに強みを持つメーカーのシェアが上がりつつあるようだ。
しかし、小型タイプも押しボタンスイッチや表示灯などからの置き換え需要を狙い、食品機械や包装機械向けなどで取り組みを強めている。こうした分野は、これまでPDのニッチ市場であったが、バックライト色を各種そろえて色で状態表示を判別できるようにしたり、PDのデザイン性の向上、EtherNet通信の搭載など高機能機種並みの装備で浸透を図りつつある。バックライトにLEDを採用し、消費電力の低減化や水銀レス化に配慮している。特に欧州は環境に敏感な地域で、水銀規制も進んでおりLED化を加速させる要因となっている。
さらに、小型表示器にEtherNet通信を搭載することで、主操作盤から離れた場所にある温度調節器やインバータなどの機器の近くに副操作盤として増設することで、これまで現状確認や設定変更の際にかかっていた時間や手間が削減できる。また、PDを搭載することで、省配線や機械・装置の付加価値アップ効果が見込めるとして、採用に前向きのようだ。
PDも初期の頃の、単なるスイッチや表示灯を代替する表示的機能から大きく変化。最近では情報端末、さらにPLCや温度調節器など各種の制御機器の機能分担的な製品に大きく変化している。
例えば、最近増えているセル生産でマニュアルなど必要なドキュメントをPDに保存しておき、エラー発生時に画面操作で対処方法を確認し、ダウンタイムを短縮したり、クリーンルームなど紙のマニュアルやパソコンなどを持ち込めない場所でも効果を発揮する。さらに、熟練技術者の技伝承といった使い方にも応用されている。
また、従来PDはPLCとコミュニケーションすることがメインで、PLCの先にある各制御機器からの伝達量が少なかったが、最近ではPDと各制御機器をI/O制御で通信接続し、各制御機器と直接コミュニケーションを図ることで、各制御機器の情報をより多く「見える・活かせる化」し、エラー・ステータス・位置情報などの有益な情報を膨大に伝達することが可能となった。
これにより、「従来PLCを使わないと位置合わせや機器調整時の連続運転ができない」「トラブル時、例えばLEDが点灯するだけで、内容把握まで時間がかかる」「簡単な現地調整でもポジション情報を1つ1つPCを使ってコントローラへ書き込みするので、時間がかかって効率が悪い」「システム全体の稼働状況を監視するのが大変」といった様々な課題が解決されるという。
一方、親和性の面では、多彩な機能とインターフェイスを標準搭載し、垣根を越えた親和性を訴求しているほか、ビギナーでも簡単に使いこなせる開発環境を表示器に持たせ、市場の拡大を図っている。