友人からEV船に乗せるから来ないかと誘われた。東京海洋大学を中心に民間企業と共同で建造した急速充電対応型電池推進漁船「らいちょうS」が桟橋で待っていた。インバータモータ駆動のウオータージェット推進で静か。受ける風もさわやかなので、これなら働く人を快適にする。▼
18ノットの推進力も問題ないと思いながら、別の方向に考えが飛んだ。国家の推進力である。半導体で圧倒的なシェアを誇った日本が、あっという間に他国に抜かされた苦い経験がある。携帯電話、液晶テレビも世界市場では半導体と同様の軌跡を辿っている。太陽光発電、風力発電も兆候が表れ心配になってきた。▼
親しい工学博士は「このままでは日本は鎖国に追い込まれる」と危惧していた。どんなに優秀な技術を持っていても、国家的な推進力の差で、先行き衰退する。脱原発決定のドイツでは、人口2500人の村で住民が配電会社を設立し、再生可能エネルギーの買取制度を利用し経営しているそうだ。配当も期待できる。▼
他の欧州、中近東、米国、中国、インドも国の力を集中させている。日本の製造業は、世界の国家の産業政策にまで目配りし、傍流分野で活躍したほうが長生きできるかもしれない。EV船の推力に使用されているインバータモータは一例であるが、日本製が強い。しかも、長期間にわたってシェアを高めている。