アメリカは第二次世界大戦以降、ベトナム、韓国、中近東等で戦争を繰り返し実践してきており、結果として数多くの兵隊が戦死している。そのため兵隊を現地に投入せずにそれを機械に代替させる目的から、無人航空機(UAV:UnmannedAir
Vehicle)、無人地上車両(UGV:UnmannedGroudVehicle)、無人水上艦(USV)、無人潜水艦(UUV)など一連の無人機、いわゆる軍事ロボットを開発してきた(写真4.参照)。特徴として、アメリカ本土から海外の戦場で遠隔操作により敵を偵察あるいは攻撃する目的を持っており、既にいくつかが戦場に投入されている。手術ロボット・ダビンチがアメリカで遠隔操作し、大西洋をまたいで欧州の患者を手術するのと同じことである。
最近は、写真5が示すエネルギー自律型ロボットが開発され、植物を摂取し、それからバイオマスを自生し燃料補給を自律的に行うものである。
世界に先駆け開発されたヒューマノイドASIMOは、話題を呼んだが、アメリカの自動車メーカーGMはNASAと共同で、上半身のみのヒューマノイドR2を開発した(写真6.参照)。
原子力発電の際に生じる劣化ウランは爆弾として戦場で使用されるが、そこに投入される無人機は耐放射線の仕様が初めから要求される。福島第一原子力発電所の複数の水素爆発後の状況は、放射線とそれを浴びたガレキが散乱しているという極限状態で、これはイラクやアフガニスタンでの戦場の状況と類似している。このような背景から、戦場ですでに実績のあるアメリカの無人機が今回福島原発に投入された。
2.欧州のロボット開発
欧州ではフランスのIntra社(写真7)やドイツのKHG社(写真8)等が原発用ロボットを保有しており、チェルノブイリ原発事故等での実績がある。
両国は福島原発事故で、これらのロボットの提供を日本へ申し入れたが、これまで投入はされていない。ドイツからはアーム長50メートル以上の注水クレーン車が導入された。
EUの場合、科学技術政策FrameworkProgram6(2002―2006)でとりわけ多数のロボット研究開発プロジェクトが展開された。
ドイツの場合、ものづくりの産業構造は機械産業を中心に日本と似ており、工場の自動化技術用として、産業用ロボットメーカー及びサービスロボットの研究開発等が行われている。その中で、例えば工場での人とロボットの協働・協調につき多くの研究が実施さている。人とロボットの協働は、危険源を有する機械であるロボットと人が共存するため、従来の機械安全の隔離の原則あるいは停止の原則は、基本的にそのまま使用できない。ロボットを人に危害を与えない程度の速度内で運転するために、安全ドライブシステム(IEC61800‐5‐2)が適用され、その強調領域に人が侵入しないために、人の動きを安全センサ(1D、2Dあるいは3D)で監視することにより、防護柵なしの安全な作業が可能となる。これらは、往々にしてソフトウェアの安全性に関する機能安全規格(IEC61508)を満たしたものが適用される。
(つづく)