ロータリーエンコーダー市場が伸長 工作機械、ロボット、半導体製造向けが急速に回復 製品開発力と販売力、コスト競争力がポイント サーボモータ向けは過去最高水準で推移展開が注目される中国市場の動向

ロータリーエンコーダー市場が伸長している。主力需要分野の工作機械の受注回復、半導体・液晶製造装置の生産拡大、ロボット市場の上昇基調などを背景に活発な需要となっている。東日本大震災の影響が生産面、需要面で懸念されたが、その後遺症はほぼ解消されつつある。製品的には、小型・薄型化と高分解能化ニーズに応えた開発が続いており、加えて防水・防塵や衝撃など耐環境性の向上も著しい。分解能を可変できるロータリーエンコーダーも発売されるなど、市場拡大に向けた努力が続けられている。市場のグローバル化とともに海外メーカーの取り組みも強まり、販売競争は激化しており、特にアジア市場の拡大で中国などのローカルメーカーもコスト競争力の高さを前面に出して浸透しつつある。市場の拡大とともに製品開発力と販売力、コスト競争力などがますますポイントになってきそうだ。
ロータリーエンコーダーは、モーター軸の回転変位量をデジタル信号に変換するセンサーのひとつとして、主にサーボモーターなどと組み合わせて位置決め、速度制御などに使われることが多い。工作機械やロボット、半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置などをはじめ、バルブ、エレベーター、情報通信機器、事務機器、医療機器、建設機械、自動車など幅広い分野で使われている。

産業界は、リーマンショックの後遺症からようやく脱し、再び拡大基調へ向かっている。ロータリーエンコーダーも、主力需要分野である工作機械やロボット、半導体・FPD製造装置などの製造装置向けの販売が落ち込み、大きなダメージを受けた。これを機にロータリーエンコーダーメーカーの再編も進み、新たな展開を見せようとしている。

現在、工作機械、ロボットとも50%前後の高い伸びで受注が増えて来ており、リーマンショック前の水準に近づいている。同様に半導体・FPD製造装置なども50%前後の伸びを見せており、ロータリーエンコーダー需要を支えている。

3月の東日本大震災の影響でサプライチェーンが大きな影響を受けたが、ロータリーエンコーダーについても半導体やコネクタ、ケーブルなどが一時入手難になったメーカーも多い。当然のことながら売り上げ面にも影響が出ているが、受注は堅調に継続しており、今後の納期面での対応に問題がなければ十分挽回が可能な状況と言えそうだ。

さらに、外需の中心となっている中国市場も、工作機械、半導体・FPD製造装置、建設機械、エレベーターなどの動向が注目されている。

過熱する中国経済を警戒した金融引き締め政策を懸念する声も聞かれるが、現状は建設機械やビル建設などの一部を除いて、大きな影響は見られず旺盛な需要が継続している。

これとともに、中国ローカルのロータリーエンコーダーメーカーも販売を強めつつあり、日本や欧米メーカーと競合しつつある。

工作機械や半導体・FPD製造装置、ロボットなどハイテク分野では、まだ機能的に劣るものの、精度をあまり求めない用途では採用が増えつつある。

国内のロータリーエンコーダーの市場規模を正確に捉えた統計が現在のところないため推定の域を出ないが、10年で280億円前後と見られる。このところ海外メーカーが、用途を限定した専用機的な特徴をセールスポイントにして、日本市場の開拓に取り組んでいる。

ロータリーエンコーダーは、専業メーカーによる外販と、サーボモーターメーカーなどによる内製に大きく分かれるが、内製分が推定では70億~80億円を占めると見られている。ロータリーエンコーダーの専業メーカーは、ここ数年でほぼ集約されてきており、国内メーカーが10社前後、海外も有力メーカーで5社前後となっている。

ロータリーエンコーダーはサーボモーターと一体で使用されることが多いことから、サーボモーターの生産に左右される。現状ではサーボモーター生産は、数量的にリーマンショック前を超えて過去最高の状態で推移している。東日本大震災でドライバー用半導体の入手が難しくなったメーカーも多かったが、徐々に解消に向かいつつある。サーボモーターを取り巻く市場環境は、現在のところ大きな不安な要素は少ないだけに、ロータリーエンコーダー需要にとっても大きな追い風となっている。

10年の世界の工作機械生産は中国が2年連続で1位となり、日本はドイツを抜いて3位から2位になった。高性能機種では日本、ドイツ製品の競争力は依然強いものの、汎用中級以下の機種は、中国が価格競争力を発揮している。こうした中級以下の市場で、中国ローカルメーカーのサーボモーターとロータリーエンコーダーの採用が今後増加してくることが予想される。

ロータリーエンコーダーの代表的なアプリケーションは、多関節ロボットの制御や半導体ウエハの移載ロボット制御、工作機械のマシンツールの割り出し、エレベーターの速度・位置制御、病院のCTスキャナーのベッド位置決めなどがあげられる。

また、移動体通信基地局のエリアコントロール、電気自動車などにおける車載機器のコントロール、クレーンなど建設機械の旋回座コントロールなどにも応用されている。

さらに、ハイブリッドカーをはじめとした車載市場も注目されている。車載向けは、温度特性やコストが厳しいことから、レゾルバが一般的に使われ、一部で磁気式のロータリーエンコーダーが採用されてきた。

しかし、最近の自動車は電装化率が著しく高くなっており、ミクロン精度のメカニカル技術とエレクトロニクス技術の融合部品であるロータリーエンコーダーを採用することで、一層快適な乗り心地の車づくりにつながるとして期待されている。

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