オムロンは、IA(インダストリアルオートメーション)事業の再強化に乗り出した。全社で20年度、売上高1兆円以上、営業利益率15%確保を目指すが、そのうちIA事業中核のFAと電子製品で倍増の7000億円を計画。日本国内での環境・省エネ市場の創出、新興国での市場拡大など国内外でIA関連機器が重要な役割を果たしつつある一方、販売競争もグローバル市場で国内外メーカーと激しくなってきているだけに、オムロンがこうした動向に主力のIA事業で取り組みを強めることで今後の制御機器市場は新たな段階に入りつつあるといえる。
オムロンの山田義仁新社長は2020年度までの新長期戦略「Value
Generation(VG)2020」計画を打ち出した。売上高を11年3月期の6178億円から10年間で62%増加させ、営業利益率を同7・8%から2倍に高める。その計画を推進するのがIA事業の中核であるIAB(インダストリアルオートメーションビジネス)とEMC(エレクトロニックメカニカルコンポーネンツ)の2つの事業で、現在この2事業で連結売上高の58%を占めている。営業利益率もIABが14・1%、EMCが14・7%とほぼ15%に近く、営業利益は501億円と全社利益のほとんどを稼ぎ出している。
VG2020ではこうしたIA事業を「最強化」するために再度オートメーション事業に注力することで、20年度までに全社売上高の70%まで高め、倍増の7000億円を目指す。「当社のS&C(センシングアンドコントロール)技術で、先進国市場でマーケットシェアの拡大、新興国での市場拡大で成長と高い収益性を確保できる」(山田社長)としている。また、市場が拡大している新興国の中国、インド、南米などでも売り上げを現在の2倍の4000億円まで伸ばす。特に省力化・省人化ニーズが高まっている中国市場では、現在の売上高970億円を、3年後に1500億円まで増やす計画だ。
そのほか、省エネ・創エネなどの環境や健康、社会インフラ関連事業の売り上げも7・8倍の1000億円を掲げている。これらの売り上げのうち、新興国などの事業は重複している部分もあり、最終的に1兆円以上を目指していく。
オムロンの売り上げは80年頃に、IAを中心として制御機器事業が売り上げの70%以上を占めていたが、新規事業の展開などでこれらの比率が低下し、営業利益率も下がっていた。今回の長期計画では主力のIA事業に注力することで「昔のベンチャー精神の溢れる活気のあるオムロンを目指す」(山田社長)方針だ。
なお、同社ではオートメーション事業強化の一環として、日・欧・中国の3カ所に「オートメーションセンタ」を設置し、マシンオートメーションのサポート体制を強化する。日本では草津事業所(滋賀県)に8月に開設するほか、9月には中国・上海と欧州(スペインかオランダ)で予定している。エンジニアリングサポートができるSE(システム・エンジニア)を13年度までに現在の3倍の600人体制にして、顧客のマシン制御を支援する。