サーボモータ市場は、リーマンショックの影響により、3年前は需要が大きく減少したが、一昨年6月頃から急速に需要が回復、半導体・液晶製造装置分野、工作機械分野、電子部品実装装置分野、建設機械分野などの主要市場ではV字回復を見せ、リーマンショック前のピーク時に比べ、金額面で80%くらい、数量面ではリーマン超えするまでに回復している。
経済産業省の機械統計によると、サーボモータの市場規模は、2009年は台数146万台(同59・1%減)、金額697億円(同60・0%減)と大幅に減少したが、10年は台数が410万台(同280・8%増)、金額が1898億円(同272・3%増)と驚異的な回復を見せた。なお、日本電機工業会(JEMA)がまとめている出荷実績では、09年度(09年4月~10年3月)は934億円(同32・9%減)だったが、10年度(10年4月~11年3月)は1811億円、同93・9%増と大幅に増加している。11年度については震災の影響が予測できないとして見込みを公表していない。
サーボモータメーカーの話を総合すると、震災前まで生産台数は過去最高ベースで推移していたため、金額面でも今年度は確実に過去最高を更新すると予想していたメーカーが多かった。これを裏付けるように、震災前からサーボモータの部品である半導体やコネクタ、電源などの電子部品などが不足気味であった。
また、今回の震災により、東北地方の電子部品や半導体、コンデンサーなどのメーカーの工場が被災、一時期サーボモータの製造に関しても若干の影響が出ていたが、現在は部品メーカーの製造ラインも徐々に回復し、生産への影響も薄れてきている。また、中国など海外に製造拠点を持つサーボモータメーカーは、直接的な影響は受けておらず、比較的冷静に状況を受け止めている。
ただ、懸念材料は中国のレアアースの価格高騰で、レアアースは、モータの材料として使用されており、世界最大の生産国である中国が生産を抑制していることもあり、今年1月から価格が3倍以上に上昇、その影響がサーボモータメーカーに次第に及んできている。最近では、中国の税関による輸出価格の制限措置が始まっているという。輸出業者がオンラインで税関に輸出を申請する場合、設定した通関の最低価格を輸出価格が下回ると、通関が許可されないというものである。
サーボモータメーカー各社は、今後の推移に注目しながらも、代替材料の模索や、レアアースを極力使用しない製品開発にも取り組んでいる。
サーボモータ市場は、円高傾向が続く中でも外需が大きな牽引役になっている。現在のサーボモータ需要を支えている半導体・液晶製造装置は、販売先のほとんどが中国や韓国、台湾が多く、国内向け販売は少ない。工作機械も同様で、特に中国向けでは日系企業や中国のローカル工作機械メーカー向けへの販売が増加している。
工作機械の生産額は09年に中国が日本、ドイツを抜いて世界一になった。中国の工作機械は、性能的には日本やドイツに劣るが、基本的な性能が発揮でき、価格が安ければそれで十分というニーズが多く、販売増の要因となっている。
中国のローカル機械メーカー向けでは、サーボモータに関して機能はそこそこでローコストなタイプを望むケースが多く国内のサーボモータメーカーでも、こうしたニーズに応えるようにローコストタイプの製品を中国市場に投入している。
一方、国内市場は震災復興に伴う需要増に期待している。加えて、風力発電や太陽光発電、二次電池関連など新エネルギーや、環境・省エネをテーマとした分野での需要増も見込まれている。
サーボモータ市場は、中国、韓国を中心としたアジア地域向けの外需が好調に推移、市場が拡大しており、リーマンショックからV字回復を見せている。3月に発生した東日本大震災に伴う部品供給の影響が懸念されていたが、一部を除いて正常に戻りつつあり、ここ1~2カ月でほぼ回復するものと見られる。製品面では使いやすさに重点を置いたチューニング操作が各社の開発ポイントとなっており、加えて高速・高精度制御、セーフティ、ネットワーク化への対応などが顕著である。ただ、モータ材料のうち、レアアース(希土類)の価格が高騰を続けており、今後のコスト面への影響が心配されている。
サーボモータの用途は、年々拡大している。工場以外では、駅ホームの安全ドア開閉や自動改札機、ETCのゲート開閉、乗り物シミュレータ、回転鮨のベルトコンベア制御、介護ベッドといった身近な日常生活の中にも採用が進んでいる。
機能面では、サーボモータメーカー各社とも、使いやすさに重点を置いたチューニング操作が開発のポイントとなっており、加えて高速・高精度制御、セーフティ、ネットワーク化への対応などが進んでいる。また、近年の機械は著しく小型・軽量化が進んでおり、サーボモータでも小型・軽量化が図られている。
機械の小型・軽量化の点から言えば、トルクの伝達・変換などの構造を排除し、サーボドライブが必要とするトルクを直接供給するようにすれば、機構が単純になってコンパクトな機械にできる。故障の発生や外的からのトラブルの要因も減らすことにつながり、コストや省資源ということからもメリットが大きい。
高速化では、速度周波数応答2・3kHz、通信周期最速0・083msの製品も登場しているほか、20ビットロータリーエンコーダーの標準搭載で100万パルス/revを超える高分解能を実現、位置決め整定時間を大幅に短縮し、高精度な位置決めや微細加工を可能にしている。整定時間を短縮することは、業務の効率化に繋がり、機械・システムの生産性が向上する。ネットワーク対応では、Ethernet技術をベースに、通信速度100Mbps全2重の高速独自ネットワークを駆使し、リアルタイム通信性能や、自由度の拡大を図った最新の製品も登場している。
また、「サーボモータはうまく調整しないと機能を活かせない」というユーザーからの意見に対し、サーボを繋げば誰でも簡単にすぐ使える操作性を実現するために、セット時間を短縮できる簡単なパラメーターの設定と、オートチューニング機能を組み合わせることで、サーボ調整の手間と時間を大幅に短縮できるようになった。
低剛性への対応もポイントで、特に高速応答の必要なマシンボンダーや、低剛性メカニックを低振動で高速駆動したい取り出しロボット、多関節ロボットなどで重要視されている。また、モータを搭載する機械の剛性にかかわらず、精度の高い自動ゲインチューニングが可能となっている。機械を振動しないようにしてサーボモータを動作させる技術が求められるだけに、各社とも独自のノウハウで振動を抑える制振制御技術を展開している。
環境面でも改良が進んでおり、一例としてアクチュエータの電動化が挙げられる。空気圧や油圧シリンダなどのアクチュエータは、形状が大きくコスト面からも見直しが進んでいる。