世界の水ビジネスの市場規模は運営・管理まで含めると2025年には約100兆円に拡大すると予測されているが、水処理や再生といった分野だけでなく、工作機械やロボットなどの動力源としての活用も有力視されてきた。機械や装置の駆動に「電気」「空気」「油圧」が使用されているが、近い将来「水」が加わる。それぞれ棲み分けは可能と見られるものの重複領域も出てくることから、電気駆動・制御機器各社の対応の仕方次第では影響も受ける。それだけに、提携なども視野に入れた対策を講じる必要がありそう。
水ビジネスの市場は、中長期的に拡大が見込まれている。産業競争力懇談会によると、2025年の素材供給市場が約1兆円、エンジニアリング、調達、建設を含めた市場が約10兆円、事業運営・管理業務まで含めた市場規模は約100兆円と予測している。
FA分野では、省水型・環境調和型の水循環システムが構築され始めている。
シャープの亀山工場では工程排水リサイクルシステムを設置し、液晶パネルの生産工程における1日4万8300トンの排水を100%浄化し再び工程で使用するクローズドシステムが完成している。
現状では水のリサイクルであるが、今後は水を機械の駆動に利用するなどFA分野での活用技術が進展するものと見られる。
日本フルードパワー工業会は、水道水や清水をシステムの作動流体として使用するアクアドライブシステム(ADS)の研究活動に取り組んでいるが、環境融和、安全、衛生、省資源、省エネルギーの側面から、ADSが機械産業に多大な貢献をもたらすことを期待している。ADS技術は油圧、空気圧、電動などの駆動源の代替ではないとしている。
同工業会主催の「IFPEX2011展」では、各社から新水圧システム技術が発表され、注目を集めていた。すでに水圧によるモータ、シリンダー、切換弁などが開発されている。蒸気タービン水圧駆動システムも発表された。
ADS市場はクリーン度の中位から高位領域をカバーすると見られ、電気駆動、空気圧駆動、油圧駆動とは一部で重なるが、棲み分けられるともいわれる。ADSは電気駆動・制御業界にとって競合と協調となる。
拡大する水関連ビジネスに対し、電気駆動・制御各社は関連付ける必要性が出てきており、異業種や同業種間の共同開発や技術提携が進むものと見られる。すでに、その動きが出ている。
計測・制御機器メーカーのチノーは今月11日、東京計器、長野計器、オーバルと海外水市場の開拓を目的に包括的な業務提携を発表した。4社共通の新ブランドによる販売協力、高付加価値商品・計装システムパッケージの創出、生産拠点の相互活用などを行う。
日立プラントテクノロジーは今年10月、韓国LG電子と水事業で合弁会社を韓国に設立する。主に韓国の工場廃水処理設備、上下水処理施設向け機器の製造販売、システムの設計・調達・建設、運転・維持管理、水処理技術の研究開発を行う。