「従業員に夢のある暮らしをさせたい。感動のある、感謝される仕事をして、お客様も会社も利益を上げる会社」にするという顧客満足・社内満足・自己満足を経営方針に掲げ実現するのが、私の務めと語るのは、宇賀神電機の宇賀神清孝社長である。世相が混沌とする中で大地に軸足を踏み締め、景気に左右されない恒常的な企業体を作り上げて3つの満足を叶える『有夢有希』を宇賀神社長に伺った。
■直近の経営環境■
業績は今がボトムである。我々の業界は他の業界と比べ2年のタイムラグがあり、現在はリーマンショックの影響が出ているときである。バブル崩壊のときは不況期が長く対策を講じるのに苦労したが、リーマンショックでは我々がそのトンネルに入るときは他業界がトンネルから出てくるときなので、見通しが分かり計画が立てられた。配電制御システム業界は、これから業績が上向く。
東日本大震災の復旧・復興需要も来年春には本格化して来る。まだガレキ処理の段階である。復旧とインフラ整備の需要はあるが、地方自治体が街の復興プランをつくるので受注増加を期待している。
大震災は、茨城県にも大きな被害をもたらした。当社は茨城県古河市に工場を持ち、水戸市に営業所がある。いわば地元企業なので受電盤、配電盤の受注を通して、復興に貢献したい。
■中期計画と事業拡大■
景気、特に建築に左右されない体質作りを進めている。以前は新築盤が7割を占めていたが、これを安全ラインといわれる3割に変え、売り上げ構成比を30%新築・30%リニューアル・30%エンジニアリング・10%その他にする方針である。現在、5カ年計画の3年目である。平成25年の売り上げを、現在と比べ1・5倍にする。復興需要も出てくるので実現可能である。この数字には、子会社のオゾン発生装置の売り上げを含めていないので、目標を上回るのではないだろうか。
このオゾン発生装置は長野県茅野市の諏訪研究所が研究開発を担い、関連会社アクエアが発売している。今年10月開催の諏訪圏工業メッセに出展し、来期から販路を確保して本格的に販売する。日本は産業構造が変わる。国として一次産業にもう一度注力する。経済産業省は植物工場を近未来産業と位置付けており、当社もこの分野に進出する。オゾン発生装置は水の殺菌のほか生育を促進する。水質改善、排水改善、水耕栽培の生産性向上に役立つので、諏訪研究所でさらに進化させる研究をしている。
植物工場に対しては、オゾン発生装置のほか、受電設備、配電盤、制御システムも受注でき、大いに魅力的である。
■国際化時代■
製造業が中国へ生産シフトし始めたときに合わせ、10年前に合弁会社の瑞東電工(天津)有限公司を設立、4年前に事実上当社100%出資となっている宇賀神電機(天津)有限公司を設立した。中国の日系工場向けと日本への輸出が半々である。日本では受・配電盤製造が主体であるが、中国ではFA向け制御盤、操作盤が多い。品質を落とさないため、部品は三菱電機やIDECなど日本製を現地で調達している。日本の製造業は中国を市場として重視しており生産拠点を現地に設ける傾向が続く。当社中国工場は筐体製造、アッセンブルの責任者に日本人を配置している有利さを活かし受注増加を図りたい。他の国とも取引を進める計画もある。
いろいろな国と接点を持つことは、社員の視野を広げる機会にもつながり、仕事に「感動」をもたらすと思う。
その意味では、国際化は「顧客満足・自己満足・社内満足」の会社方針に沿っている。