営業活動していると、相手に質問することの大切さがわかる。情報をとるには質問しなければならないからだが、それよりも相手と話がすぐ途切れてしまうのが恐いと思う販売員も多いのではないか。営業活動には質問がとても大切であると認識していても、相手に質問することは簡単ではない。特に、まだ注文がもらえない見込み客の段階では、些細なことにも気をつかって面談しなければならない。当然質問するには、十分な注意が必要である。
前2回にわたって質問する時の心得を述べてきた。一つ目は、「枕詞のような前置きの言葉を使え」ということであり、質問にソフトさを演出するものであった。二つ目は「根掘り葉掘り質問する時は親しみを込めるべし」であった。当初から根掘り葉掘り質問することはないだろうが、万一そういう破目になった場合には、目、口元、全身を使って親しみを表現するということであった。
今回は三つ目として「建設的な質問を心掛けるべし」に関して述べてみる。質問と言えば、マスコミのリポーターが大勢押しかけて、浴びせるような質問をする。いきなり大声で、相手が答えたくないような質問をしている。これなどは、質問力としては論外である。もっとも報道番組は、相手から話をもらうことではなく映像的に視聴者に見てもらえばいいのだからインタビューとは言えない。
ラジオの番組で街角リポーターや有名人をインタビューするアナウンサーには、上手く相手に話させる人がいる。彼等は、相手からプライベートの情報を聞く技術を身に付けているのだろう。見せ場を作るためにやるテレビのレポーターとは違って、いきなり相手にプライベートな質問をしていない。いきなりは逆効果であることを知っているので、質問をする背景を要領よく話しながら質問している。
あるいは、最初は表面的な質問をして、次第に相手のプライベートな領域に踏み込んでいる。人は出会ってすぐ相手に立ち入った質問をされるのを嫌う。それでも、インタビューは視聴者が知りたがっている相手の本音やプライベートなことに言及しなければならない。その辺りの、呼吸みたいなものが実に上手いと感心させられる。多くの人にインタビューしてきた経験と、技術から生まれたものなのだろう。
マスコミのリポーターやインタビューは、相手のプライベートに関することが建設的質問なのであるが、営業活動上で「建設的な質問を心掛けるべし」とは、顧客や見込み客の趣味などのようなプライベートな関する質問ではない。趣味や家族、休日などに関するプライベートな質問は、ある程度人間関係ができてきたと感じた時にする質問である。
ここで言う建設的な質問とは、相手の仕事に関することである。当然と言えば当然の心得だが、あえて質問の心得を挙げたのは人間関係の良好な顧客との面談で、趣味や個人的話題に終始するのが癖になっている販売員が多いからだ。
話好きな人に対して、よいしょの質問をしていると、とりとめのない雑談に終始してしまう。そのような営業に慣れてしまうと、見込み客を相手にする時に困る。見込み客は、販売員をどのように評価するか待ちかまえている。
商材を含めた自社アピールが終わると、いつもやっているプライベート的な質問をする雰囲気でないので窮する場面が多い。顧客との雑談になった時に、話題を変えて建設的質問をすることを常に心掛けていれば、見込み客に対する接し方も変わってくるだろう。
(次回は8月10日掲載)