国際的なエネルギー消費削減への取り組みが進む中、三相誘導モーターの高効率化対応が進んでいる。米国、欧州、中国など海外諸国が先行する形で法規制が強化されつつあり、対応が遅れていた日本メーカーも取り組みを強めている。経済産業省や日本電機工業会(JEMA)も規制動向の収集や具体的な取り組みを行っている。省エネ先進国といわれている日本も、三相誘導モーターの高効率化対応は遅れており、グローバル市場の開拓促進の上からも早急な取り組みが必要となっている。
経済産業省は今年1月、国内における三相誘導モーターの使用実態調査を行った。それによると国内での三相誘導モーターの普及台数は約1億台で、家庭用・業務用・産業用を問わず全ての三相誘導電動機が消費する年間消費電力量は約5400億kWhと推計。これは、わが国における全年間消費電力量の約55%と半分以上を占めていることになる。
このうち、産業部門における年間消費電力量は約3600億kWhと見られ、産業部門全体の年間消費電力量約4900億kWhの約75%を占め、相当量のエネルギーを消費する機器であると言える。
モーターの効率レベルについては、IEC規格で規定されており、クラス分類は低い効率からIE1(標準効率)、IE2(高効率)、IE3(プレミアム効率)、IE4(スーパープレミアム効率)の順に定められている。米国ではIE2とIE3タイプが70%、欧州でもIE2タイプが12%を占めているのに対し、日本はIE4、IE3対応品はまだ普及しておらず、全体の97%がIE1の標準効率タイプと言われている。
日本の対応が遅れている背景には、海外では三相誘導モーターのほとんどが、標準品として販売・採用されているのに対し、日本は逆にほとんどが顧客の仕様に合わせて作る特注品が採用されていることが大きな要因として挙げられる。
地球温暖化防止の点からエネルギー使用の効率化は大きな国際的課題であり、とりわけエネルギー消費の大きい三相誘導モーターの効率化対応が急がれている。
米国では、すでに1997年にエネルギー政策法(EPAct)施行されているが、10年12月19日からはこれに代わりエネルギー独立安全保障法(EISA)が施行されて効率化規制を開始しており、モーター容量によって、IE3とIE2への対応を義務付けている。カナダも今年1月1日から米国同様、IE3とIE2への対応を義務付け、韓国も今年1月1日からIE2への対応を求めている。
欧州は今年6月16日からIE2の義務付けが開始しているが、15年1月1日からはさらに厳しくなり、IE3かIE2+可変速ドライブがモーター容量によって義務付けられる。
急速な市場拡大が続く中国は、今年7月からIE2相当の規制を開始しており、東芝、三菱電機などが対応品を発表している。
仮に日本の三相誘導モーターの全てがIE2に置き換わったとすると、年間87億kWh、IE3に置き換わった場合、年間155億kWhの消費電力量の削減になるという試算もされている。これは全電力消費量の約0・9~1・5%に相当し、かなり大きな省エネ効果が期待できる。
経済産業省では三相誘導モーターが、省エネ法の特定機器の要件に該当するとして、特定機器の判断基準小委員会を新たに設置し、トップランナー方式による目標基準値等の策定について検討を行っている。
三相誘導モーターの省エネ規制を12年には開始し、20年までに90年比で25%の削減を目指していく。