枠組みや骨組みのことをビジネス用語的に言えば、フレームワークということになる。営業の戦略を考える上で、3Cというフレームワークがよく使われる。カスタマーとコンペティターとカンパニーの頭文字をとって3Cという。フレームワークの3Cに沿って一つひとつ検討し、総合的に営業の戦略を策定している。3Cに関して、理解が深ければ深いほど成功する戦略が策定される。
つまり孫子の兵法にある「相手を知り、我を知らば百戦しても危ふからず」のことである。3Cは営業策定の場だけでなく、販売員が現場で活動する際に、常に念頭に置かなくてはならない重要なフレームワークである。販売員が知っているようで、一番知らないのは顧客のCである。したがって顧客のことをよく知る販売員は営業活動する上で有利に働くことができるし、上々の営業成績をあげることができる。
コンペティターのCに関しても、競合会社のプロフィルや、たまたま知った情報を重ね合わせて知っている程度だろう。顧客と競合会社の関係や競合会社の販売員の動きを、日常的に知ろうとすることは重要である。ところが、この重要な情報を知ろうとしてない。
競合相手と顧客の信頼関係をよく分析して相手が勝っている点と自分が勝っている点を比べたら、勝てそうもなかった相手にもスキを見つけることができる。相手の苦手な商材、相手販売員の行動、意外と狭い人脈などが見えてくると勝てる仕方が見えるだろう。3つ目のCであるカンパニーに関しては、自社のことだからよく知っている部類に入るだろう。ただし知っている事実を理解しているかというと、多少の疑問が残る。ことが起こってからあわてて対策を立てたり準備する泥縄式対応であったり、考えばかりが先走る企画偏重式運営などの現像が表れるのを見ると自社のことをよく理解しているとはいえない。
3C全般に関して、もっと理解を深めていかなければならないようだ。その中でも販売員が、特に力を入れるCはやはり顧客のCに関してである。客先担当したばかりの販売員は当然のことであるが、長く担当している中堅の販売員も、顧客のことを知っているとは言い難い。販売員は担当して長い顧客との打ち合わせを何度も経験している。打ち合わせの中で知ったことや顧客が日頃話してくれることなどを、継ぎ足してイメージをつくっている程度のことで満足しているケースが多い。だから販売員が実際に売っている商材の周辺を知ることが、顧客を知っているということになってしまう。
なぜそういうことになってしまうのか。最大の理由は、質問しないからだ。顧客からは鋭い質問がある。販売員は答える。そのために自社カンパニーのことや、商材にまつわる勉強をしっかりしている。
しかし、販売員から鋭い質問はない。理由はいくつかある。質問したくとも、質問する内容がわからない。「今は何を、次は何を設計製作するのか」「どこのメーカーを使用しているのか」などのような凡庸な質問しかしていない。顧客から出てくる物件テーマにこだわり、問い合わせ対応を迅速にして、商材のアピールをしていれば毎月、永久的に売り上げを確保できると思っているからだろう。
しかし、成熟の時代は混沌とした変化の時代でもある。だからもっと顧客を知るための質問を心掛けなければならない。だからといって質問をしてやるという固い表情で面談するだけでは肩が凝る。利害を離れたゆとりある質問も大切である。そのため、日頃から相手の仕事や会社の話題をさがしておくのも質問する時の心得と言えるだろう。
(次回は9月28日掲載)