銅線の外周を磁性体薄膜で覆った磁性めっき線を用いた新技術が信州大学工学部水野勉准教授により発明され、センサーや変圧器に効用のあることが明らかにされた。渦電流形変位センサー、磁気探傷センサーの特性向上と測定範囲の拡大に役立つほか、誘導加熱装置や高調波トランスなどの効率向上を可能にするという。渦電流形変位センサーで特許出願中。
磁性めっき線は(1)磁性体薄膜の磁気シールド効果によって銅線内に入り込む磁束を低減することで、渦電流損に依存する交流抵抗の増加を抑制する(2)インダクタンスを増加させる(3)磁束をより遠くまで作用させるなど、3つの効果がある。
交流抵抗は、銅線7・9Ωと比べ磁性めっき線は直流抵抗表皮効果で0・1Ω、近接効果で2・1Ω低減する。インダクタンスも周波数10MHz付近で銅200μHに対し、磁性めっき線は500μHと増加効果がある。
また、磁束では磁性薄膜が、あたかもヨークの働きをし、銅線に比べ1・1倍以上遠くまで作用する。
こうした磁性めっき線の効果により、センサーの特性向上と誘導加熱装置、高調波トランスの効率向上を可能にする。
水野勉准教授の実験では、磁性薄膜材料に厚さ1μmの鉄コイルは従来の銅線コイルと比較して1・5倍の変位検出感度向上、1・4倍のコイル長/径の拡大を実証。また、DC―DCコンバータ用トランスの交流抵抗低減に有効であることを確認している。新技術は渦電流形変位センサー、磁気探傷センサーなどの計測、誘導加熱装置や変圧器などの電気機器における従来センサーを使用した技術を大幅に向上させる可能性がある。
新技術の今後について、渦電流形変位センサーで効果は実証済みであるが、さらに特性向上のための磁性薄膜の材料検討を進める。磁気探傷センサー、誘導加熱装置については実験による実証を行う。