防爆関連機器を必要とする危険個所は、石油製品生産工場、石油精製プラント、トンネル掘削工事現場、原油基地、LNG基地、塗装工場、火力発電所、石油・天然ガスなどの備蓄・貯蔵場所などがあり、これらのところでは可燃性ガス・引火性液体などを使用することから、爆発の要因となりやすい電気機械器具は法律で定められた防爆構造の機器を使用することが義務付けられている。
昨今、これらの危険施設は老朽化しているものも多く、しかも管理・保守する熟練担当者も定年などにより、年々減少している。同時にコスト低減の一環として、これらの管理・保守をアウトソーシングする会社も増加、設備の現状を社員がはっきり把握していないことも多い。この結果、事故やトラブルが起きやすくなることにつながり、初動対応の遅れで、さらに大きな災害に発展するという危険性を内在している。
いったんこうした災害を起こすと生産の停止、設備の破損に加え、企業の社会的責任といった大きな問題に直面することになる。
厚生労働省は、防爆構造規格に関しての通達として昨年8月防爆性能基準、10月に型式取り扱いを出した。防爆構造規格は実質2つが存在するが、そのうちの1つであるIEC規格に基づく「技術的基準」を廃止し、代わって「国際防爆指針」が適合された。この通達により、防爆機器メーカーは今後、市場のグローバル化に対応した国際防爆指針の検定を増やすものと見られる。
8月の通達では「電気機械器具防爆構造規格における可燃性ガスまたは引火性の物の蒸気に係る防爆構造の規格に適合する電気機械器具と同等以上の防爆性能を有するものの基準等について」、10月に出た通達は「防爆構造電気機械器具の型式の取り扱いについて」である。
防爆構造基準は、「電気機械器具防爆構造規格」と「国際規格(IEC規格)」の2つの体系が実質的に存在する。今回の通達内容は、防爆構造規格は1つとされているが、規定の規格に適合しない電気機械器具についても、IEC規格準拠の物は適合すると見なしている。
IEC規格基準としては、1988年以来「技術的基準」があるが、昨年8月の通達で廃止され、「国際防爆指針」に適合するものが構造規格に適合するものとして扱われるようになった。
今回の構造規格のIEC整合化に伴い、曖昧な「型式ごと」の文面を明確にした。防爆機器メーカーは、依然として「構造規格」と「国際防爆指針」のどちらかの規格に基づく検定を受けることになるが、市場のグローバル化に伴い輸出するケースを前提に、今後は「国際防爆指針」の適用が増えるものと見られる。
さらに、昨年大手クリーニング業者が、建築基準法により住宅・商業系地域で使用が禁じられている引火性溶剤を、同地域で使用していたことが指摘され問題になった。
クリーニング工場では、引火性の有機溶剤で洗うドライクリーニングが行われているが、引火性の有機溶剤を用いるドライクリーニング工場は、建築基準法第48条により立地規制があり、住宅系・商業系用途地域での立地が認められていない。
国土交通省では違反業者に営業継続を認める条件として、ドライクリーニング工場について電気設備に防爆措置を行うこと、溶剤を保管する部屋に換気機能を設けること、さらに引火した場合、自動停止する装置を備えるなどの防火対策の技術的助言・指導を打ち出した。
具体的には、引火性溶剤の使用に伴う火災の危険性に対する安全性を確保する基準を規定することとし、引火性溶剤の保管方法や、洗濯機・乾燥機の安全対策、作業場の防爆措置、ソフト面での安全対策などの技術的基準である。
この中で、溶剤を保管する容器の設置場所から水平方向1メートル以内の電気設備は防爆措置を行うことや、容器が設置されている部屋に換気設備を設けること、洗濯槽内の酸素濃度を爆発濃度以下に制御する機能を付加、引火の恐れや静電気が発生する場合、機械が自動停止する機能があることなどが挙げられている。
特に防爆に関しては、危険場所の分類がIEC規格のゾーン1「通常作業において、ガス・蒸気爆発性雰囲気となる可能性が時折ある場所」に該当し、防爆型コンセントや防爆型換気扇などの防爆機器が対象となる。