防爆製品は、制御機器業界以外にも関連し、モータなどの日本電機工業会(JEMA)、測定器などの日本電気計測器工業会(JEMIMA)、照明器具の日本照明器具工業会(JLA)などが挙げられるが、各工業会は連携した活動を行っており、08年10月から施行された電気機械器具防爆構造規格の改正では、検定済み防爆製品の継続製造・更新について厚生労働省に働きかけ、成果を生み出している。
IT機器の普及は、防爆関連市場に影響を与えている。タブレッドパソコン、携帯電話、Webカメラなどの電子機器の危険領域での使用だ。現状は、まだ非防爆タイプの製品の使用は日本では認められていない。しかし、海外では「危険領域での使用は使用者側の責任になる」旨の注意書きが機器に貼られて実際に使用されているという話も聞かれる。日本と海外の防爆規格のダブルスタンダード化ともいえる。
こうしたIT機器の普及と合わせて、危険エリアでのネットワーク化対応の防爆製品も普及を始めている。防爆型の広域アクセスポイントや指向性の遠距離タイプ、無指向性のアクセスポイントなどを活用し、無線LANによるネットワーク構築を提案する動きも出てきた。
新たな防爆技術も提案されている。「DART」という防爆技術は、電気回路全体をモニターできるインテリジェントな検出回路を使うことで、危険なスパークなどを検出すると、その電源をマイクロ秒以内でOFFにし、スパークが誘引されて爆発などが起きないように防御する。今まで大容量な電源が必要な機器を危険場所で使用するには制約が多かったが、この制約が解消されるほか接続できる機器数の増加やケーブルも長くできるなどの利点が生まれる。
防爆対策には、「耐圧防爆」「内圧防爆」「安全増防爆構造」「本質安全防爆」「油入り防爆構造」などがある。
「耐圧防爆」は着火源を頑丈な箱で被い、電気火花により着火した火炎や高温ガスを箱の外に出さない方法で、内部で点火爆発しても外部に悪影響を与えない構造となっている。容器は内部の爆発圧力に耐え、周囲の爆発性ガスへの火炎逸走を防止する性能を持たなければならない。光電スイッチ、バーコードリーダー、プログラマブル表示器、電子天びんなどで採用されている。
「内圧防爆」は箱内にきれいな空気などを封入し、内部の圧力を外部より高く設定することで、外部からの危険ガス侵入を防ぐ構造。内部圧力の保持方法によって、給気口や排気口を設ける通風式と、密閉する封入式がある。操作盤など大型の電気機器で採用されている。
「安全増防爆構造」は正常な運転中、操作の際に点火源を持たない電気機器(巻線、接続端子など)に限定して適用できるもので、接点開閉部、高温発生部などのある電気機器はこの構造を採用できない。
一般的に点火源を持たない電気機器が点火源となりにくいように安全度を増加させ、断線、絶縁不良などの故障が起こりにくいようにしたもの。
「本質安全防爆」は、あらかじめ電気火花エネルギーを点火エネルギー以下になるようにシステム構築する方法。その電気火花は、爆発性ガスに対する最小点火エネルギーの50%以下に設計されている。この構造は、必要に応じて各種安全素子を活用し、安全回路自体に防爆性を持たせている。接点信号変換器、表示灯、ブザー、近接スイッチなどで採用されている。
最近は、コスト面からフィールドバス用のバリアより本質安全防爆構造の機器を使うケースが増えてきている。
「油入り防爆構造」は、火花やアーク、高温度を絶縁油の中に深く沈めて爆発性ガスが点火源となる恐れのある部分に触れないように隔離したもので、内圧防爆構造と同じような性格を持つ。
また、「バリアリレー」は本質安全防爆構造の一種のリレー中継装置で、危険場所にあるリミットスイッチや押ボタンスイッチなどのON/OFF信号を、非危険場所へ中継させる。爆発性ガス雰囲気の中で、汎用のリミットスイッチや押ボタンスイッチが使え、さらに危険場所に配線する本質安全回路の断線・短絡・地絡や、非本質安全防爆回路のトラブルの波及など、あらゆるトラブルが生じても安全性を確保する。光電スイッチやブザー、ランプが使えるバリアも製品化されている。
最近では、国内防爆検定取得と機械安全規格認証を受け、防爆安全と機械安全両方を満たした「防爆機械安全」というセーフティリレーバリアが登場し、新しい需要を形成している。機械安全と防爆安全が確保されたシステムで、爆発性雰囲気内での安全システム構築に対応する。例えば、このリレーバリアに非常停止用押ボタンスイッチや安全スイッチなどの安全入力機器と、安全規格に適合したコンタクタを接続することで、防爆安全と機械安全の双方が実現できる。
NECAでは防爆電気機器の点検や保守の促進、啓発を目的に「防爆安全ガイドブック」を発行しているが、イラストを多用して目で見ながら理解を深められることから好評を得ている。
また、NECAでは機械運用安全で設けているセーフティアセッサー資格認証制度を防爆電気機器分野でも設けることにした。「セーフティベーシックアセッサー(防爆電気機器安全資格制度)」(略称=SBA―Ex)は、防爆電気機器を使用する現場設備の安全パトロールや点検を行う設備の運用者、管理者、オペレーター、保全関係者などを対象に、防爆電気機器に対する正しい基礎知識を持ってもらうことを狙いとしている。
今年11月25日に第1回の講習と試験を、東京と大阪で開催する。
防爆機器とそれが使用される用途は多岐にわたり、それぞれが専門的な知識を要求される。防爆機器は、防爆機器メーカー、販売店、セットメーカー、設置業者、エンドユーザーが連携した形で販売及びメンテナンス体制を構築していくことが、他の製品に比べより重要となっている。
防爆事故の中には、こうした責任の所在がはっきりしないケースも多いと言われている。防爆機器の普及とともに、こうしたモラル面での向上も図ることで、災害防止につながる展開が求められる。