操作用スイッチの市場は、日本電気制御機器工業会(NECA)の2010年度出荷実績が356億円で、前年度比136%と大幅に伸びているが、07年のピーク時に比べ80億円ほど減少している。
その要因の一つとして、プログラマブル表示器やタッチパネルへの置き換えが挙げられる。それぞれに特徴があることから使い分けがされているものの、新たな需要開拓は重要課題と言える。最近は欧州メーカーに加え、台湾、中国、韓国などアジアの新興国メーカーも品質レベルを上げており、コストメリットを活かす戦略で日本メーカーと競合も増しつつある。
こうした中、スイッチメーカー各社は機種の再編などで、生き残りに向けた取り組みを強めている。
日本コパル電子は10月から、日本航空電子から照光式押しボタンスイッチの生産移管を受け、子会社のフジソクブランドとして、同社とフジソクの両社で販売を始める。機種は航空電子の13AL、13BL、15EL、15GL、15HL、15KLの各シリーズ。コパル電子は、照光式スイッチの品ぞろえが不足していたことから、これの充実と量産効果を活かしシェア拡大を図る。航空電子は、DIPスイッチに次いで、照光式押しボタンスイッチも生産を中止することになり、これで操作用スイッチ事業からの撤退となる。また、山武もシステムソリューション事業強化の観点から、今後のスイッチ事業について検討していたが、照光式押しボタンスイッチについては撤退することになり、顧客、製品は専業スイッチメーカーに継承した模様。
パナソニック電工は10年9月から今年にかけて、リレー、スイッチの機種整理を発表している。スイッチでは、販売数量の少ない機種のターコイズスナップスイッチを今年8月に受注中止したほか、トグル、タンブラー、波動、押しボタンなどのスイッチの一部も12年8月末に受注を中止する。
こうした中で、オータックスは、照光式スイッチ市場への参入を検討しており、10月4日から幕張メッセで開催の「CEATEC
JAPAN」に参考出品する。同社はDIPスイッチ、電源スイッチで実績が高く、これらのスイッチとの相乗販売効果を狙う。
一方、操作用スイッチの新たなニーズ掘り起こしへの取り組みも進んでいる。富士電機機器制御とデジタルは、業界初の配線レス・電源レスの押しボタンスイッチの販売を開始している。操作部分と実際の開閉部までの通信を無線で行うことで、この配線をなくし、しかも押しボタンを押すことで内蔵の小型発電機により電気を発生することから、信号送信のための電源も不要にしている。遠隔操作ニーズなどで需要を期待している。富士電機機器制御は指紋認証式の押しボタンスイッチも販売しており、こうした新機軸のスイッチで市場創造に取り組んでいる。
リーマンショックで、操作用スイッチメーカーも大きな打撃を受けたが、今後こうした提携推進とニーズ開拓で市場拡大を進めようとしている。