現代の販売員は、相手の質問を待っている。そしてスラスラと答えるのに長じている。見事に答える販売員は、高評価を受けている。相手の反撃を阻止したのだから当然である。しかし、初めから質問する顧客や取り立てて必要を感じる顧客は多くはないし、時間に余裕があったら別だが、あまり興味の湧かない商材やPR紙の紹介程度では質問する熱意も出ない顧客が多いのが現状だ。
それなら反撃を想定して待つ訓練よりも、反撃がない場合や軽いジャブ程度の反撃が終わったら主導権を取って攻め込む訓練が必要になるはずだ。主導権を取るということは、販売員の方から質問することである。つまり質問によって情報を収集し、多くの情報によって有利に話を展開させることが、営業戦線の勝ちを決定づけることにつながる。
ところで販売員に「何でもいいから情報を取ってきなさい」と声をかけておき、戻ってきたら「どうだった、何か情報をつかんだか」と聞いてみると、多くの販売員は「とりたてて情報はありませんでした」と答える。情報を取るために本当に質問したのかどうか怪しいので「どんな質問をしたのか」と聞いてみると、あまりにも初歩的な質問である。「何かお困り事はありますか」とか「今何を作っているのか、次に何を設計するのか」などのようなことである。顧客からの反撃を想定した商材の内容や自社の内容に関することはよく勉強しているのだが、主導権を取って有利に営業活動をすることを怠っているとしか思えない。このように質問が下手なのは質問の対象があまりにも狭く、商談に直結するような質問ばかりが頭にあるせいである。短絡的な質問を頭から離し平凡な質問から脱却して、幅の広い情報を取るためには、質問の対象をまず意識してみることである。相手の人柄、仕事の仕組み、仕事の内容、持っている夢や、したいことなどたくさんあるだろう。
(次回は10月12日掲載)