最近の傾向では、プログラマブル表示器のHMI端末を長年使用してきた装置メーカーが、パネルコンピュータへの移行を検討するケースが増えてきている。これは、従来計装技術を担ってきたラダープログラム世代が少なくなり、再利用性の高いC言語などの高級言語(HLL)への世代交代が進んできたことが一因となっている。
他社にない新たな付加価値を装置につけるために何が必要であるか。その選択肢の一つとして、パネルコンピュータの汎用性が着目されている。
装置メーカーは、他社との差異化を図るための独自技術のプラットフォームとして、汎用アーキテクチャを選択するケースが増加傾向にある。その際、GUI構築などについてはHMIソフトウェアなどを導入し、画面の見映えや、PDFなどのドキュメント閲覧機能、リモートモニタ機能などを構築することで、アプリケーションとしての付加価値を高めている。
こうしたハード面に加え、産業用コンピュータの長期供給・長期保守という特徴をバックアップする保守体制の充実をポイントにした取り組みも強い。産業用コンピュータメーカーのほとんどが、5年間の長期供給と供給終了後7年間の保守対応をうたっている。これをオプション機能や保守契約締結などで、さらに長期間対応できるような体制をとっているメーカーも増えている。当然のことながら24時間対応できる保守サービス体制になっており、バックアップ体制も産業用コンピュータを安心して採用できる裏づけに繋がっている。
産業用コンピュータの今後の動向は、Windows7などOS及び、PCIからPCI
Expressへの移行が進むものと予想される。
産業用コンピュータは、使用目的や設置場所に応じて形態が多様化し、単なる省スペース化に伴うカスタマイズ以外に、幅広いユーザーに対応するエントリーモデルや、既存ユーザーの更新需要を狙った産業用サーバタイプなど、二極化する傾向も強まっている。
また、産業用コンピュータの海外市場開拓はまだほとんど進展していない。販売後のサポート体制が重要であることから、これへの対応がとれないと顧客に満足して使ってもらえないということが背景にある。しかし、産業用コンピュータのユーザーも確実に海外シフトを強めており、早晩対応が必要になる。市場のグローバル化、特に新興国市場の発展は産業用コンピュータのニーズの拡大にも繋がっており、今後は海外市場開拓が大きなポイントのひとつとなりそうだ。
昨今のエネルギー問題は、産業用コンピュータでも低消費電力化、熱対策などを中心に取り組まれており、性能・機能を上げながら環境負荷を小さくする環境効率向上に、開発ポイントのひとつを置きつつある。リサイクル問題も含め、産業用コンピュータのもう一つの方向性を示している。
産業用コンピュータに求めるニーズは年々多様化しているが、それだけ期待も高く、市場としての魅力も大きい。CPUやOSメーカー、各種ベンダーとの協業などで、新しい価値創造に向けた産業コンピュータの将来は明るいものがある。