三菱電機は、大容量のSiC(炭化ケイ素)パワーモジュールを採用し、30%の省エネを実現した鉄道車両用インバータを世界に先駆け製品化。2012年1月に東京地下鉄の車両に搭載し各種調整試験後、営業運転に使用する。同社では地下鉄のほか、国内外の鉄道会社、車両メーカーに向け、同インバータの拡販を行っていく。
SiC(Silicon
Carbide)は炭素とケイ素の化合物。従来、鉄道車両用インバータにはSi(シリコン)が使用されていたが、SiCはSiより発生損失の低減、高温での動作が可能で、次世代の主回路システムとして同社が世界に先駆け、SiCモジュール採用の鉄道車両用インバータを開発した。
SiC素子は、Siに比べ絶縁破壊電圧が約10倍で、半導体を薄く構成(約10分の1)でき、低抵抗を実現。同素子を採用したインバータは、IGBT部のターンロス(熱損失)を55%低減、ダイオードのスイッチングロス(同)を95%低減し、インバータ全体の発生損失を30%低減した。
さらに、モータ電流の正弦波化によりモータの損失を40%低減したほか、素子の低損失化による高周波スイッチングにより、全速度域で電力回生ブレーキを実現し機械ブレーキの使用を低減、回生電力が増加した。
こうした主回路システム全体の損失低減により、鉄道車両として30%の省エネを実現した。
体積・質量は、冷却装置の小形化などにより、40%低減を実現。さらに、機械ブレーキの使用を低減することでブレーキシューの摩耗を低減、メンテナンス周期の延伸が図れ省メンテナンスを実現した。
また、モータ制御モードの切り替え不要と、モータ電流の正弦波化による磁歪音低減により、従来の車両システムより最大6〓の低騒音化も図った。
同社では、国内外の鉄道会社、車両メーカーに向け、同インバータの拡販を図り、15年度に鉄道事業の連結売上高2300億円を目指す。
製品仕様は直流600V/750V。主回路方式は2レベル方式電圧型PWMインバータ(電力回生ブレーキ付き)。制御方式は135kWモータ2個×2群。走行風自冷方式。