昨年7~9月のピーク電力実績は936kWである。この数値を140kW減少させ、ピーク電力796kWまで下げる取り組みとなる。
まずは工場内を総点検した。1階は事務所、板金エリア、塗装エリア、溶接エリア、SUS製品加工エリア、キュービクル製作エリアからなり、立体式の自動塗装エリアは2階建てである。3階はキャビネット組み立てエリア、EO(イージーオーダー)盤組み立て・検査エリア、資材エリア、物流倉庫エリア、設計室、食堂である。
溶接ロボットやレーザ加工機、自動フォーミングライン設備、ガスケット設備、鉄板吸着搬送機械、自動倉庫など最新設備が導入されている。
キュービクル製作の床はロールが敷かれ、高所作業による危険リスクをなくすため、下降式スペースも設けられている。板金から塗装、組み立て、検査、出荷まで無駄のない配置である。
徳山工場長と設備管理係古屋氏らが限られた時間の中で対策を検討した。そして、「ピークカット」、「基礎電力削減」、「出勤日変更などその他の活動」の3項目案をまとめ、全員の了解の元に実行へ移す。
◎電力ピークカット取り組み
最大の課題であるピークカットでは、工場は午前9時から午後12時までのエアコン使用を最大限停止する。塗装工程を午前4時から稼働し午後13時に終了する取り組みである。
自社製の電力監視装置のデータで塗装工程では約350kWが使用されていることが確認され、ピーク電力カットに大きく貢献することから稼働時間を夜明け前の午前4時にした。
社員はこれまでの生活時間を変えるので、体調を整える上でも家族の協力が欠かせない。社員の理解に一抹の不安を持ちながらの説明に対し「被災者の姿を見聞きし、自分たちも停電を経験しているため、きわめて前向きに対応してくれた。仕事量が増えたときには、不満もいわず午前2時から出社している」(徳山工場長)。
電力使用制限令は9月9日に解除された。同社では操業時間を元に戻す考えであったが、しかし社員から「9月いっぱいまでこの時間体制で行う」との提案が出て、引き続き午前4時出社体制で勤めている。
塗装工程の時間繰り上げだけでなく、工場稼働の金曜日休日、日曜日出勤の変則体制も工場勤務の全員が快く受け入れた。
停電で被災地の灯りを消してはならないとの思いで仕事に励む山梨工場の社員の心意気は、「会社全体に好影響を与えている」(丹羽社長)。
(次回は10月26日掲載)