市場規模は、汎用電子温度調節器(計)で約200億円、それにボード・ユニットタイプやPLCなどの組み込みモジュールタイプなどを合わせると250億円から300億円と推定される。しかし、単価の下落が続いていることから、台数の伸びほど金額は増えていない。中国など新興国のメーカーもローコスト・単機能をセールスポイントに、一定のシェアを確保しつつあり、日本メーカーとの競争が激しくなっている。国内市場は大きな需要先のひとつである半導体製造装置や液晶製造装置などの需要がここに来て低迷していることが、温度調節器(計)市場の先行き不安材料として心配されている。ただ、新規用途として電力事情の大きな変化を背景に、ソーラーパネル需要が拡大することが見込まれており、これからの波及効果を期待する声は強い。
食品や成型機向けはこれからも安定した温度調節器(計)の主力市場として拡大傾向が続くものと見られる。特に、中国を中心としたアジア市場では、世界生産の基地として工場の立地が継続しており、温度調節器(計)に対する需要も高い伸びで継続している。現在のところ日本メーカーの温度調節器(計)とは、用途によって棲み分けされている面が強いが、機能や価格差が段々縮小しているともいわれ、今後は警戒が必要となりそうだ。
温度調節は昨今、電子機器が高密度で小型化が進んでいることから、成型品などでは微妙な調整が重要性を増している。特に、半導体やFPD(フラット・パネル・ディスプレイ)などでは、歩留まり率に関係してくるので高精度な温度調整が必要となってくる。
食品分野では、味覚や品質管理上から温度調整を頻繁に行うことで、消費者の嗜好と食品の安全に応える取り組みを続けている。
温度調節器(計)は、サーモスタットなどを使ったメカニカル式から、現在では半導体技術を利用した電子式へ大きく変化した。電子化によって温度精度が格段に向上し、より緻密なものづくりが可能になるとともに、半導体の量産化で製品価格も大きく下がり、需要裾野の拡大につながっている。
リーマンショックの影響から温度調節器(計)メーカー各社は、大幅に売り上げを落としていたところが多かったが、徐々に売り上げを戻しつつある。今年3月に起こった東日本大震災で、温調器生産面で多少影響を受けたが、現在ではほぼ正常に戻っている。