1938年の創業以来、「ライフサイクルエンジニアリング」のテーマに取り組んでいるのが、兵庫県西宮市に本社がある菅原電機産業である。同社は、高圧変電機器・設備(キュービクル)の製造を中心に、堅実な歩みで着々と業績、業容を伸ばしてきた。最近ではキュービクルや各種の配電盤、制御盤などのレンタル・リース事業をメーンに全国に事業網を拡大している。同時に、これらに付随する電気工事施工事業にも積極的に取り組んでいる。
【直近の経営環境】
弊社は創業当初、大手電機メーカー向けに変圧器などを中心に製造、納入していたが、下請けが中心では会社のオリジナル性が薄れることから、徐々に自社製品として販売する方向にシフトしていった。
一方、創業時から「ライフサイクルエンジニアリング」のテーマに取り組んでおり、このテーマを生かした事業戦略を模索していた。こうした時、阪神大震災が発生(95年)、大震災を契機に自社製品のレンタル・リース事業に注力するようになった。
震災当時は、文字通り復旧・復興工事が緊急を要しており、仮設の電気設備としてキュービクルや配電盤の需要が急増、これらに比例しレンタル・リースの物件が急増し、事業の柱に成長していった。
特に工事現場などでは、工事期間のみキュービクルや配電盤、制御盤が必要で、工事が終了すると不要になるケースが多い。こうした場合、メーカーから購入するより、工事を行う期間のみレンタル・リースする方が、施工業者にとって無駄な投資、経費を使うことがなくなり効率的である。
私は、自社で製作した高品質・高機能なキュービクルや配電・制御盤などを、今すぐ必要なユーザーに素早くレンタル・リースすることを心掛けており、「機能を貸す」というコンセプトでユーザーに必要な機能を提供している。さらに、レンタル・リースすることで再利用・再使用ということの有用性もユーザーに提供している。
こうした状況下、今年3月に東日本大震災、さらに福島原子力発電所の事故という未曾有の大災害が発生した。被災地の復旧・復興に向け、弊社も製品のレンタル・リースを積極的に行うことで貢献することができたと感じている。
【現在の事業内容】
当社の設備のレンタル期間は1日から5年まで幅広く対応しており、変圧器の容量も100kVAから7000kVAまで豊富にそろえている。レンタルするには多くの在庫が必要だが、当社は兵庫県加古川市に敷地面積約6000平方メートルという広大なストックヤードに製品を保管。在庫台数はキュービクル・配電盤など約1000台、変圧器は約2000台に上っており、在庫規模は国内トップクラスである。
豊富な在庫を背景に、全国の建築工事や土木工事現場、プラント工事現場、さらに、各種イベント会場など様々な現場に製品のレンタル・リースを行っている。これまで弊社が関わった案件は、関西国際空港の整備工事、大阪の梅田・阿倍野・難波、京都駅の各再開発、りんくうタウン、神戸ハーバーランドなどの開発、本州四国連絡橋、第2東名高速自動車道路、大阪市営地下鉄、さらに全国の発電所やダムなど、官民合わせ多数の案件に携わっている。
最近では、博覧会のパビリオンや屋外でのイベント、コンサート会場などにもキュービクルや配電盤のレンタル・リース需要が拡大しており、ユーザーの業種・業態の拡大に対応している。
【今後の目標、取り組み】
弊社は、少数精鋭で製品の設計から製作・施工・運用・保安・再利用・再使用という「ライフサイクルエンジニアリング」に取り組んでいる。現在では、高圧受変電設備、トランス、配電・分電盤のほか、インバータ盤、発電機、高調波対策機器、高圧区分開閉器盤、フリッカ対策機器などレンタル・リース品目を拡大し、多種多様なニーズに応えている。
また、国内のみならず、インフラ需要が拡大している中近東など海外に向けてのレンタル輸出も増加しており、今後、注力していきたい。
弊社の特徴は、レンタル・リース事業に加え、これらに付随する高低圧電気設備工事やメンテナンス工事、リニューアル工事、省エネルギー工事など、電気工事施工事業の幅を広げている点にある。最近では、電力監視・制御・計装工事、フリッカ対策工事などの案件が増えており、今後は、高圧受電設備の設計やコンサルティング事業も拡大する方針である。
一方、品質面では日本配電制御システム工業会(JSIA)が、優れた品質保証体制と優秀な製造技術を有する工場として認定する「JSIA優良工場」に認定されており、品質面でも万全の体制を整えている。
【今後の夢】
弊社は自社ロゴ「SERVING
YOUR
NEEDS」が表しているように、仕える精神で企業活動を行い、多角的に社会に貢献していくことを掲げている。さらに、総合エンジニアリングにサイクル循環の考え方をプラスし、社会資本の充実に少しでもお役に立てるよう、今後も企業努力を続けていきたい。