セル生産方式は、一人から数人で製品を製造する自己完結性の高い自律分散型生産方式として、リーマンショック後に注目を集めた。とくに、先進国の製造業は多品種少量、変種変量生産を余儀なくされたことから、セットメーカーで導入が一気に広がり、機械、精密、医薬品などの分野へ波及しつつある。
この作業員によるセル生産方式は、生産量の変化に柔軟に対応、生産性向上、作業員の士気高揚、生産リードタイムの短縮などの利点があるものの、他方で作業者の技量の差が生産性に影響、ストレス発生、多能工の養成、自律分散型生産に対する理解不足などの課題も出てきた。
こうした課題解決に、急速に注目されだしたのが、ロボットセル生産方式である。
これまでのロボットの導入は、溶接、塗装、搬送などが主体であり、セットメーカー向けもベルトコンベヤーラインに採用されるのがほとんどである。1台から数台のロボットで完成品を作る自己完結型のセル生産方式はソフト、ハードとも解決すべき技術課題が多くある。
経済産業省では、少子高齢化、熟練工不足の中で製造業がグローバル競争に対応するには、ロボットセル生産が不可欠と判断、国家的な見地からロボットによる完全無人化生産システムの研究開発支援に乗り出した。
構想では、2015年に人とロボット分担から部品の搬入・搬出・搬送のロボット化による無人化セル生産に移行し、25年にロボットが作業プログラムを自動生成し自動復旧までできる完全無人化生産システムを実現する。この完全無人化までに、国内で新たに100万台のロボットセルを設置する。
こうしたロードマップを受け、各社のセル生産用ロボット開発競争が始まっている。
変種変量生産に対応できるパラレルリンクロボットで、安川電機、パナソニック、東芝など電機メーカー、ファナック、川崎重工業などロボットメーカーなどが参入し、新型を開発している。
三菱電機はロボットセル実現の課題である段取り換えの時間短縮ができるロボットを開発、自律型へ大きく踏み出した。
IDECは、多品種変量のロボット制御セル生産システムを発売している。
産官学挙げて取り組みが進んでいる完全無人化生産システムのロボット開発は、今後急速に進展するものと見られる。