東日本大震災以降、多くの制御盤メーカーから社長など経営層の方々が、当社に来社いただくことが増えている。その理由は、制御盤ビジネスへの危機感を抱いているからだ。日本の制御盤内は、“空気が多い"と表現できるほどスペース効率が悪くできている。しかも、機械は小型化され、機能は上がり制御回路数が毎年増えた結果、制御盤は毎年大きくなる傾向にある。しかし一方で、近年は制御盤の粗利が極めて低くなっており、ビジネスとして将来への不安を感じざるを得なくなっている。このような経営者の危機感を解きほぐしたい一心で提言してみた。
多くの経営者は会社を維持し、社員と社員の家族のために命がけで取り組んでいる。薄利では社員に十分な給与が払えなくなり、社員のモチベーションも上がらなくなる。薄利の中の経営では、将来への投資、創意工夫や改善への意欲も削がれる。今こそ、この局面を打開し、世界で競争に勝てるような制御盤業界に大きく変わることが求められている。
当社では、「盆栽キャビネット」(登録商標)の名称で「小型で機能はそのまま、性能は永久」という新しいコンセプトの制御盤を開発し、提案活動を行っているが、自動車メーカーで採用が始まったのをはじめ、各業界からの問い合わせも増えている。
日本の制御盤はお金がかかっている。それは(1)国内仕様と海外規格仕様の2種類の制御盤を区別して製作しているケースがある(2)海外規格を先取りしないため後追いコストがかかっている(3)端子などのネジ締め部分が多く配線工数が多い(4)EMC対策の知識が少ないため、コストをかけすぎている(5)ケーブルダクトを多用し配線時間をかけすぎている(6)熱エンタルピーとベルヌーイの効果を活用していないため熱対策にコストがかかっている(7)配線工賃が高すぎる(8)3次元CADの導入が遅れ、敷設と解析が一気通貫で設計されていない(9)ユーザーの上位下達が強いため制御盤メーカーの創意工夫によるコスト低減の意見が通りづらい、などの理由が挙げられる。
低コストの背面配線
盆栽キャビネットの構造の特徴は、ジョーダクトを配置し盤内のケーブルダクトは最小限にとどめていること、ジョーダクト背面を使ったグリッド配線による結線方法であること、熱はジョーダクト背面のケーブルチャンバーを通って熱対流させていることなどが挙げられる。
この背面配線は欧米では一般化している配線方法で、コストパフォーマンスの高い方式であるが日本ではまだ一般化していない。(次回は11月30日付掲載)