関東地区のFA・制御機器流通市場は、東日本大震災の影響を良くも悪くも大きく受けて、4~6月は前倒し発注から売りが大きく伸長した。しかし、7月以降サプライチェーンの回復とともに前倒し発注がなくなり、正常な状態に戻ったことで、上期としては前年同期比5%前後の売り上げとなっている商社が多い。
東北では岩手・宮城・福島県を中心に、社会インフラ施設や工場などが津波で流されたり、壊されたりして大きなダメージを受けている。がれきの処理が遅れていることや、今後の震災対策の方針が固まっていない部分もあることから、現在は土木や原発処理関係の復興需要が中心となっている。
しかし、電力関連、大手メーカーなどの工場、ビル関係を中心に、配電関連機器の需要が出ており、配電制御システムメーカーや、これと取引のある商社で復興関連需要として売り上げが伸びている。今回の震災で、配電制御システムメーカーは、今後3年間分の受注が見込めるという話も出ており、「東北ではホテルや飲食店、遊戯場などでの設備投資が増えている」(大手FA商社)。
ただ、関東地区でも産業の空洞化に伴う売り上げ減を危惧する声は強まっている。顧客の海外移転に伴い、大手商社中心に中国やタイ、韓国などに販売拠点を開設する動きは依然活発だ。
中国や韓国に工場を移転した企業の中には、制御機器や電子部品を現地調達するため、商社もその調達窓口として営業を行い、移転に伴う売り上げ減を補うことを狙っているが、最近これらの国のローカル部品メーカーも品質が向上しており、現地調達の対象部品になりつつある。
同時に、円高を逆手に、ユーロやウォンの安さを利用して欧州や韓国製品を扱い始めた商社もある。
台湾の部品メーカーも、日本メーカーの中国生産移転とリンクして、現地調達を決定する日本の窓口に対して、商社を前面に立てた戦略を取り始めている。
とかく円高のデメリットが強調されるが、これをうまく活用することが新たなビジネスチャンスにつながる可能性が生まれている。海外メーカーにとっては日本市場開拓の追い風ともいえる。
東日本大震災はエネルギー関連需要拡大への大きなきっかけになった。
従来からも環境・エネルギー関連市場への取り組みを強める動きはあったが、原発事故による電力危機はこの動きを一層加速させようとしている。
省エネでは、電力使用監視関連機器の導入、LED照明への切り替え、インバータや省エネモータの導入などが取り組まれている。再生可能エネルギーでは、ソーラーや風力、電気自動車のインフラ関連などでのビジネス拡大に取り組んでいるところが多い。
LED照明を扱い商品に加え、工場などものづくり現場はもちろん、店舗や公共施設への売り込みを図る商社も増えている。
また、ビル内のエネルギー使用実態を分析し、省エネにつながる機器の提案販売や、将来的には家庭まで巻き込んだビジネスチャンスとなる可能性もある。
一方、商品や市場など取り巻く環境が大きく変化するなかで、ソリューション提案の重要性はますます高まっている。
FA・制御機器でのネット販売が一定の役割を果たしつつあり、これとの連携も重要になっている。ネットを活用する顧客の多くは若い社員が利用していると言われる。若い社員の中には人との対面は苦手だとして、ネットを製品検索と発注を行うケースが増えており、こういう傾向に商社としてどういう対策を採るかも今後のポイントのひとつと言える。
市場が変化するなかで、各商社が社員一人一人の活用をどのように行っていくかも問われている。