今年度上期の経済状況は、東日本大震災の影響により急速な生産縮小が見られたが、その後、生産活動は次第に回復へと向かった。しかし、欧州や米国の財政不安による世界的な景気後退感や円高の進行などにより、先行き不透明な状態が続いている。
中部地区経済の基盤を担う自動車関連産業においては、震災後、大幅な国内生産の落ち込みが見られたが、サプライチェーンの復旧により、生産量は急激に回復しつつある。また、電気・電子、工作機械関連企業においても、新興国需要に支えられ、回復基調となった。
ところが、ここに来てタイで大洪水が発生、自動車、電機関連など日系企業多数が入居する工業団地が浸水して被害が拡大しつつある。円高も長引いており、企業業績への影響不安や、中国での金融引き締めによる需要減少など、景気の停滞懸念が出ている。
こうした状況下、中部地区の商社では大震災の影響から自動車関連企業を中心に、計画されていた設備投資案件が一時的に延期されるなどの状況が発生した。その後、生産活動の回復に伴い、投資計画にも動きが出始め、また商品調達において多少の混乱が生じていたが、比較的早く回復するなど、それほどの落ち込みはなかったようだ。
しかしながら、既存分野の市場は頭打ちのため、新商材・新領域の開拓や、エンジニアリング力を高めて顧客にシステムを提案する能力が商社に求められている。
新規分野としては、電気自動車、太陽電池、環境関連など将来性のある分野に関する商材を提案し、開発、システム構築まで行っているところがある。自社製品として、都心などの狭い敷地でも利用可能な立体駐車場システムを開発したり、遺伝子発現を生きたまま高感度に測定する自動測定装置を開発したりしている。
顧客サービスとしては、様々な分野のニーズ、求める技術、求められる技術を選択し、上手く組み合わせて、各種技術をバランスよく調和させ顧客に提案している。社員に各種資格取得者をそろえて、機械要素からシステムまでの幅広いニーズを満たし、顧客と一緒に問題解決のための提案・開発を行い、好評を博しているところもある。
情報発信も重要ということで、各種自動省力化機器メーカーなどが製造する膨大な製品情報、価格情報をインターネットで共同発信したり、最新のメカトロニクス製品情報を満載したインターネット用の新商品ニュース媒体を発行したり、定期的にモノづくりに関する情報誌を送ったりして、顧客フォローに力を入れている。
海外に目を向けると、国内メーカーの海外進出に合わせて、商社の方でも拠点を設け、営業サポート、アフターサービスなどの体制を整えていかないと、受注に結びつかないようだ。特に成長著しい中国・韓国・台湾・東南アジアに拠点を設けているところも出てきている。
景気の先行きは不透明だが、東日本大震災で津波に浸かったものの、建物までは壊れなかった工場の受配電関連、制御、設備、ロボットなどの注文が第3四半期ぐらいから動き出しそうで、プラスの要因もある。商社では、こうした動向を見ながら、人材・商材・資本力などの総合力を高めて、生き残りを図っていくことが必要なようだ。