日本電機工業会(JEMA)の下村節宏会長が25日の記者会見で明らかにした11年度の重電機器の生産状況は、東日本大震災の影響が心配されたが、生産への影響が限定的であったことから予想以上の早い立ち上がりを見せ、電力用機器の復旧需要、中国を中心とした新興国の旺盛な需要などに対応でき、上期は同2・8%増の1兆6289億円となった。
震災による電力用機器の緊急調達から発電用原動機が同3・9%増、回転電気機械が3・0%増となったほか、静止電気機械器具も省エネ・環境対策としてのUPS(無停電電源装置)や汎用インバータなどの電力変換装置が2桁増となるなどで同7・8%増と大きく伸長した。
下期は同4・3%増と上期を上回る伸びを見込んでいる。国内の電力安定供給確保に向けた電力用機器で引き続き増加が見込まれ、重電機器全体の生産を牽引する。交流発電機(同56・3%増)、変圧器(同15・1%増)、高圧開閉器(同24・5%増)などで2桁の高い伸びが見込まれている。
これに対し、汎用電気機器は、大幅な円高の進行継続、中国の金融引き締め策などにより、上期好調であったサーボモータ(同8・3%減)、汎用インバータ(同3・7%減)、PLC(プログラマブルコントローラ)(2・4%減)などの製品でアジア向けを中心に輸出の減少が見込まれており、さらなる下振れ懸念も予想されている。
この結果、通期では同3・6%増と10年度の同9・0%増には及ばないものの、2年連続の増加となる。
電力用機器の電気炉が同76・3%増の148億円、ガスタービンが同71・4%増の1686億円、交流発電機が同38・0%増の1539億円などの製品が大きく増加するのをはじめ、閉鎖型配電装置が同22・0%増の1797億円、電気溶接機が同21・3%増の314億円、直流機が同16・7%増の29億円、保護継電器が同15・7%増の248億円、高圧開閉器が同15・3%増の263億円、高圧遮断器が同15・0%増の445億円、UPSが同13・1%増の472億円などで2桁の伸びを示している。
サーボモータは同0・8%増の2084億円、汎用インバータは同6・7%増の740億円となって、上期が堅調であったことから前年度比プラスを維持するが、PLCは0・9%減の1128億円とわずかにマイナスになる見込み。
今回の見通しには、タイの洪水被害の影響は織り込んでいないが「現在のところ見通しがはっきり立たない。自動車生産への影響が大きく、これが立ち上がるには時間がかかる」(下村会長)として、下振れする可能性もあるとしている。
しかし、一方では工作機械などの生産設備での復旧に向けた需要増も予想されており、今後の見通しをさらに難しくしている。