低消費電力が魅力に
NECAでは操作用スイッチを、押しボタン、照光式押しボタン、セレクト、カム、ロータリー、トグル、デジタル、DIP、シーソー、多方向、タクティル、スライドなどに分類している。このうち照光式押しボタンスイッチと押しボタンスイッチが、操作用スイッチ全体の37%を占め、この2つのスイッチで操作用スイッチ全体の約3分の1強を占めている。さらにタクティル9%、DIPスイッチ8%、トグルスイッチ7%、ロッカースイッチ5%となっている。
照光式押しボタンスイッチは、表示灯を兼備したスイッチで視認性とスペース性でメリットがある。光源はLEDが高輝度、長寿命、低消費電力の点で主流となっている。とくに低消費電力は大きな魅力で、装置全体でスイッチを多数使用することが多いだけに、メリットが大きい。また、液晶や有機ELを光源や表示素子に採用し、情報の多彩な表現力を実現した押しボタンスイッチも普及が進んでいる。
一方、デザイン性と機能性を満たすタイプとして、ベゼル高さが2ミリのスイッチも浸透し始めている。パネル全体がシャープで引き締まったデザインになるほか、凸凹の少ない操作パネル面は、食品機械や半導体製造装置で求められるゴミや埃の付着を防いだり、パネル面の突起に当たることで生じる誤動作などを防ぐ利点がある。
安全の確保という点から、安定した市場を形成しているのが非常停止押しボタンスイッチ。プログラマブル表示器の普及が進む中にあって、非常停止押しボタンスイッチは必須であることから需要が拡大している。通常、使用しなくても非常時に確実に働く構造が開発のポイントである。
さらに、安全性・危険回避の追求では、イネーブルスイッチが注目されている。軽く押すとON、さらに押すとOFF、離すとOFFの3ポジションで操作できるスイッチで、グリップスイッチなどに採用されている。人は危険を感じた時、必ずしもスイッチから手を離すとは限らず、逆に力が入って握り(押し)すぎる場合もある。このどちらの操作にも対応できる危険防止構造となっている。
タクティルスイッチはプリント基板に直付けし、シートキーボードスイッチやパネルスイッチなどと組み合わせて使用することが多く、特に携帯電話の多機能化に伴う需要が急増している。低背化、インチピッチを採用した端子が特徴で、丸洗い可能な密閉構造や照光タイプなどもあり、確実な操作感が得られる。今後はLED採用の照光式タクティルスイッチの需要が増えるだろう。
SMT対応タイプが浸透
DIPスイッチやデジタルスイッチは、パソコンやOA・情報・通信機器などで多く使われ、操作頻度があまり多くない用途で採用されており、SMTに対応したタイプが浸透している。
DIPスイッチは、一般的に一度設定するとあまり操作しないことから、接触信頼性の確保が求められる。メーカーではこうした課題を解決するために「ナイフエッジ構造」などの独自の接触方式を開発し、フラックスなどの浸入による接触不良の解消を図るとともに、プリント基板などへの実装後の洗浄もシールテープなしで可能にしている。
シーソースイッチは、電源のON―OFFなどに良く使われる最も一般的なスイッチ。比較的大電流の入り/切りを行うため、操作時の突入電流による接点やハウジング対策が重要となっている。機器の小型化が進む中で、シーソースイッチの小型化も年々進んでいる。
シートスイッチやパネルスイッチは、パネルデザインの自由度が高く、耐環境性も良いため、悪環境下の生産現場から携帯用の民生機器まで幅広い市場を形成している。耐環境性の面では、トグルスイッチもIP67相当の保護構造まで製品化されている。また、操作レバーを全面照光式にした製品も登場、ON・OFFが暗い場所でも操作レバーの位置で確認できる。多方向スイッチは、1本のレバーで多くの開閉が可能で、細かな操作を行う用途に最適だ。
最近発売されたトグルスイッチやスライドスイッチは、スナップアクション方式を採用し、クイックな動作で出力の安定を図り、接触信頼性を高めると同時に長寿命化を実現している。
カムスイッチは、多くの回路とノッチが得られるため、複雑な開閉などに対応できる。用途によって操作開閉頻度に大きな差があるため、接触信頼性の確保が最優先で求められている。高周波対応のスイッチも、情報通信分野などの進展に伴うアイソレーションやインサーションロスなどを高める工夫を凝らすことで、新しい用途開拓に繋がっている。
医療/食品分野で急拡大
最近では防浸・防水性能が高いフットスイッチが医療分野、食品分野で採用が急拡大している。フットスイッチでは安全性がさらに重要視されており、3ポジションタイプのほか、安全ロックレバーを搭載したタイプや、ペダルの高さを低くしたタイプなどの新製品が相次いで発売されている。
さらに、自動ドアやエレベーターなどの安全対策用として、テープスイッチを内蔵したセンシングエッジなどのスイッチの需要も拡大している。
AC/DC共用スイッチも、今後期待される。DC100Vといった高容量でも使用できることから、普及が進む電気自動車など新しい用途開発が見込まれている。