昨年3月に発生した東日本大震災は、自然の持つ脅威と企業の危機管理について改めて考えさせるきっかけとなった。そして、東北を含め日本のものづくりを国内の各地域が支え合い、それが世界のあらゆる産業を支えていることを実証したともいえる。ここ数年、地球温暖化防止の観点から二酸化炭素排出抑制に向けた省エネへの転換が世界的に取り組まれ、日本はその先頭を走ってきた。発電効率の高い原子力発電もその一環として組み込まれていた。しかし、大震災以降は、原発そのもののあり方が見直され、火力発電などが再稼働し始める同時に、省エネだけでなく、節電へ大きく舵を切り始めた。省エネ・節電への取り組みを一段と加速させるとともに、環境負荷の少ない再生可能エネルギー導入促進への追い風につながっている。
こうした流れの中で、スマートグリッド技術にも大きなスポットが当たり始めている。電力活用のオートメーション化とも言えるスマートグリッド技術は、オートメーション技術が工場の外に出て活用され始めた典型例かもしれない。
円高や電力供給不安、中国をはじめとする海外需要への対応などから工場の海外移転の動きが強まっている中で、日本の産業活性化には、省エネ・節電関連産業の振興も大きな施策の一つだ。スマートグリッド技術もその一環として活用が期待されているが、抜本的なエネルギー対策も求められる。
10年間で2兆円市場に
省エネ効果がすぐにわかるとして急ピッチで採用が進んでいるLEDは、今後10年間で倍増の2兆円市場が見込まれ、このうち照明用途は約6000億円と現在の2倍に拡大する。LEDは低消費電力と長寿命という大きな特徴を持つが、ネックだったコストも国策的な節電への取り組みで、一挙に導入へのアクセルが踏まれつつある。
LEDに限らず省エネは大きなビジネスに育つ可能性を秘めている。工場のものづくり現場では一つ一つの機械の電力消費が計測され、無駄な電力排除への取り組みが強まっている。また、ビルでも照明や空調、ポンプ、エレベーターなどの効率的な運用で、省エネ効果を発揮しようと対応策が検討され、その状況を計測、表示、通信する機器の需要や、専門的に省エネ診断・提案する会社のビジネスが大きな産業に成長しようとしている。
エネ問題解決へのヒント
昔は水車を発電や動力として活用していた時期もあったが、環境負荷も考慮したエネルギー活用の時代には、新たな発想も必要になる。振動や波力発電なども研究されているが、動向が注目されるのは、スイッチを押す圧力で電磁誘導によって電力変換し、さらに無線通信で信号を送信する技術だ。電気や電池が不要で無線通信が行えるところに、エネルギー問題解決へのヒントがあるような気がする。
そしてもう一つはロボットの活用である。人手に代わって、重いもの、危険なもの、産業環境の悪い場所などでの作業をロボットが行ってきたが、いまはこれに加え、人手に比べ正確で早く、休憩なしでも作業できるという特徴からの導入も増加しつつある。中国などの新興国では人件費などの上昇だけでなく、人手ではできない細かで単調な作業をロボットに置き換えることで、高い品質と生産性を確保する方向に変化し始めている。
コスト低減より人手補完
国内でも介護や建設、警備などサービスロボットの市場創出への取り組みが行われている。ロボットの導入は生産コスト低減という目的よりは、人手を補完するという側面が強まり、海外生産立地も含め、ものづくりへの見方を変化させることにもつながってきそうだ。
大震災は日本のエネルギー政策見直しに一石を投じ、新たな知恵を生み出す一歩になった。世界一のものづくり技術、世界一の省エネ技術対応力を有する日本は、もっと自信を持って世界に羽ばたく必要がある。「がんばれ、日本!」。