新年、あけましておめでとうございます。皆様方には、お健やかに新年を迎えられたことと、お慶び申し上げます。
会員の皆様、経済産業省はじめ関係省庁・関係団体の皆様方には、平素より、日本電機工業会の活動に格別のご支援とご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
2012年の年頭にあたり所感の一端を申し上げ、新年のご挨拶に代えさせて頂きたいと存じます。
昨年の東日本大震災そして福島第一原子力発電所の事故から、はや9カ月あまりが過ぎ去りました。今なお、多くの被災された方々、避難を余儀なくされておられる方々が、懸命なご努力を続けておられます。私たちも、この惨禍を決して忘れることなく、また風化させることなく、一日も早い復興が実現するよう願っております。
さて、昨年の日本経済は、リーマンショックの影響からようやく立ち直り、回復の兆しをみせておりましたが、3月11日の東日本大震災により、極めて深刻な影響を受けました。震災直後、様々な社会インフラの喪失、サプライチェーンやロジスティックスの崩壊など、供給面で多くの制約が生じ、生産活動が大幅に低下しました。しかし、企業の生産再開に向けての懸命なご努力や、関係方面の昼夜を分かたぬご尽力により、震災後の復旧は予想以上のスピードで進展致しました。しかし、我が国経済は今なお円高、株安、デフレ基調が継続しており、依然として足踏み状態が続いております。
一方、ギリシャの財政破綻に端を発したEUの金融不安は、何とか当面の危機は回避できたものの、いまだ不安定な状況から完全に脱したわけではありません。加えて、米国の経済不安、中国の成長鈍化など、懸念材料はまだまだ存在しており、今後も世界経済の動向には、十分注意を払う必要があります。こうした内外の状況を打破するためには、一刻も早く成長への基盤を固め、新たな一歩を踏みださねばなりません。成長なくして繁栄はありません。
世界経済が低迷する中、我が国の強いリーダーシップの発揮を期待致します。昨年の電機業界の生産状況は当初、3月の東日本大震災の深刻な影響が懸念されましたが、幸い白物家電が昨年に対し僅かに減少したものの、重電が電力用機器を中心に好調を保ち、上期全体の生産額は昨年を上回ることとなりました。一方、上期の白物家電の国内出荷額も、省エネ製品の積極購入などがあり、昨年を上回る結果となりました。今年は、電力用機器に需要増が期待されるものの、輸出中心の汎用品需要の停滞、白物家電の国内需要の一巡、タイの洪水の影響など、重電、白物家電共に伸び悩みが懸念されます。今後の市場動向をしっかり見極めながら対応していく必要があります。
さてJEMAは、重電、原子力、新エネルギー、白物家電といった広範な産業分野の振興、発展、環境保全、国際標準化などの共通課題、そして国の様々な政策課題に電機業界挙げて取り組んでおります。今年は、更に多くの厳しい課題に取り組むことになると思われます。
まず重要なのは、エネルギー問題であります。
ご案内の通り、現在、政府内で『エネルギー基本計画』の見直しが進められております。今後この中で、これからの我が国の新たな電力の供給構造が示されるものと思います。資源が極めて乏しい我が国は、厳しい条件の下で、新たな成長を遂げなければなりません。日本の国情を踏まえ、将来の方向を誤ることなく、原子力発電も含め、適切かつ実現可能なエネルギーのベストミックスの構築に、関係者のご尽力を切にお願い申し上げます。私ども電機業界も、電機産業が有する多くの優れた技術や、これまで培ってきた高品質で高度なものづくり、数々の豊富な知見を総動員して、我が国のエネルギーの安定供給に貢献していく所存であります。
原子力発電については、現在そのあり方を含め色々な角度から議論が重ねられておりますが、安全性は全てに優先されることは言うまでもありません。今も現地で懸命な収束活動に携わっている方々に、敬意を表すると共に、今回得られるであろう様々な知見が、我が国はもとより、世界の多くの原子力発電国にとっても貴重な情報として共有され、更なる安全性の確立に生かされていくよう願っております。
一方、エネルギーの消費面でも、重電、白物家電共に、更なる高効率化、省エネ技術の進展、高度化が求められております。こうした課題にも、世界をリードする先進技術や、「ものづくり」を一層強化すると共に、低炭素技術・省エネ製品の開発を促進して、わが国のCO2排出削減に貢献すると共に、低炭素社会の実現に向けて取り組んで参ります。
次に地球温暖化対策であります。電機・電子4団体では、CO2排出量削減の自主行動計画を着実に推進しております。10年度実績は、実質生産高CO2原単位が、90年度比で47%の改善となり、3年連続で目標の35%改善をクリア致しました。一方、昨年のCOP17では、我が国は、京都議定書の単純延長に反対を表明したものの、世界の大勢は、京都議定書の延長を選択しました。今後続く逆風の中でも、決して軸ぶれすることなく、世界のすべての主要排出国が参加する公平かつ実効性のある、新たな国際枠組みの構築に向けて、日本の強いリーダーシップの発揮を切望致します。
三つ目は、国際標準化の推進であります。我が国経済の低迷を打破するためには、新産業の創出、拡大と、新時代にマッチした事業の新たなグローバル展開が不可欠であります。新興諸国の経済成長は著しく、エネルギー需要も極めて旺盛であります。また同時に世界の多くの国々で、地球環境保全や低炭素社会の構築への取り組みも加速されつつあります。こうしたことを踏まえると、我が国の電機産業には、まだまだ国内外に更なる成長の芽は広がっており、グローバルな事業機会を積極的に取り込んでいくことが成長の鍵といえます。
また近年、世界の国々で新しい概念の広範な電力の需給システム、いわゆるスマートグリッドへの取り組みが進められています。我が国でも官民の力で、様々な研究、実証事業が展開されています。JEMAもこうした動きに対応して、関係する会員企業の皆様と共に与えられた役割に取り組んで参りたいと思います。
グローバル市場において、我が国の優れたシステムや技術が高い評価を得て、日本の市場優位性を向上させるためには、我が国技術の国際標準化が極めて重要であります。国を挙げてスピード感を持ち、日本の標準が世界をリードする国際標準化戦略を推進するために、電機業界としても官民力を合わせて、しっかり取り組んでいく所存であります。
我が国は、昨年ハワイで行われたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)において、TPP交渉参加に向けた協議に入ることを表明しました。私ども電機業界も、我が国が他国に後れを取ることなく、しっかりと国際競争力を高め、我が国の優れた技術や高品質な製品をグローバル市場に浸透させるには、経済連携など国際的な通商環境の構築は極めて重要であると認識しております。将来に亘って、我が国が世界の大きな経済的枠組みの中で成長を遂げられるよう、TPP参加実現に向け、関係各位のご尽力をお願い申し上げます。
今年は日本が再出発する、極めて重要な年になると思います。内外を取り巻く情勢は依然として厳しく、先行きの不透明感は拭い去れませんが是非、関係省庁や関係機関とも密接な連携を図り、会員の皆様と一丸となってこの閉塞感を打破し、新たな成長軌道を切り開き、電機産業の発展と輝かしい日本の再生に向けて、邁進して参りたいと思います。
最後になりましたが、この一年の皆様方のご発展と一層のご活躍を祈念致しまして、私の新年のご挨拶とさせて頂きます。