東日本大震災発生後の電力危機でさらに高まった省エネ・節電意識と、新エネルギー開発への取り組みは、従来の電気に対する意識を一挙に変化させた。従来これらの取り組みは、投資コストとその効果の天秤にかけた状態で取り組むケースが多く、照明のLED化や、ビル・工場全体での電力消費把握といった形で、省エネ税制など法的な側面から推進を促す面が強かったと言える。
しかし、3・11以降は、原子力発電への不安とこれに頼らない発電方法、さらにはコストは二の次とした節電への取り組み意識が急速に広がった。
照明のLEDへの置き換えは、今は家庭やコンビニだけでなく、事務所、工場などの直管型蛍光灯の置き換えに移っている。電球型に比べ高いと言われていた直管型LEDも、停電による生産停止などのロスに比べれば、投資の負担を無視しても購入する動きにつながっている。
新エネルギーとして期待のソーラー発電も、パネルそのものは急激な価格ダウンで赤字に陥っているメーカーが多いが、電力に変換するパワーコンディショナーの価格は安定し、需要も堅調に拡大している。ソーラーに限らず、風力、地熱など再生可能エネルギーは、DCで発電しており、これをパワーコンディショナーでAC(交流)やDCなど使用する機器に応じて変換している。ACは今でも通常に使用しているが、DCは比較的低圧での使用が多い。
再生可能エネルギーなどのDCをACへ変換するとエネルギーロスが出るため、そのまま使用することで、省エネにつなげようというのが直流給電方法で、従来の電力送電も直流にしようと検討されている。
パワーコンディショナーをはじめ、電気自動車、充電スタンドなどでのDCの使用は、直流の開閉時にアークが発生するため、この危険性をどう回避するかが検討課題となっている。DC100V~650Vといった高電圧は、ACでは問題なく対応できているが、DCでは、まだ研究を継続している機器も多い。
操作用スイッチ、コンセント、コネクター、リレー、ダイオード、ヒューズ・ヒューズホルダー、ボックスなど高圧直流給電で新たな開発と置き換え需要が生まれることが見込まれる。
スマートグリッドに代表される電力の効率活用を前提とした国を挙げた社会インフラ整備の一環として、波及効果は大きく、国内市場の空洞化に不安を抱く商社にとっても、また機器開発を進めるメーカーにとっても大きな市場創出につながる動きとして注目される。