世の中の成功者といわれている人々が雑誌の対談で語る言葉やテレビ、ラジオのインタビューに応える言葉の中で印象に残るのは、幼少の時から抱いていた夢をあきらめずに追い続けてきたということである。特にスポーツ選手の場合は顕著である。インタビューに応えて「子供の頃から大きな舞台に立つのが夢であったから、それが実現できてとてもうれしい」と言っている場面をみた視聴者はすごく感心をする。誰しもが子供の頃に夢を抱くが、一貫して持ち続ける人は少ない。ずーっと持ち続けることに畏敬の念を抱くのである。
それぞれの世界でマスコミに追いかけられる成功者は夢を抱き続けたことは間違いないし、人一倍努力をしてきた人であることも間違いない。
しかしそれだけではなく、人一倍の努力に耐えうる身体的能力や知的能力に優れていることも多くの人の認めるところでもある。大方の人は子供時代の夢は途中で意識的に、あるいは無意識のうちに忘れてしまい別の道に進んでいく。別の道に進んでも、その世界で再び別の夢に出合う。いわゆる大人の夢である。大人になってからの夢は何々をやってみたいという願望から始まる。願望が強い人は夢を夢のままにしておかないで、しっかり目標を見すえて、挑戦し続けるから夢の実現に近づいていく。願望が弱ければ、いつしか忘れていく。そしてまた別の道に進んだ時に、また夢に出合う。というように人は前に大きく進もうとする時に夢を持つのである、
東京オリンピックや万博の時代から80年代にかけて、多くの人々が夢を追いかけてみたくなる環境があった。製造業に従事する人は技術を学び、やがて小さいながらも独立して物づくりをしたいという人も多かった。販売に従事する人は商売を学び、信頼される顧客ができたら独立して商社をつくりたいという人も多かった。
人々はみんなが社長になることを夢み、多くの会社ができて、多くの人の夢がかなって多くの社長が誕生した。
90年のバブル崩壊前には東京都の大田区の一区に製造業が七〇〇〇社以上、秋葉原地区には二〇〇〇社以上の電気部品関係の商社があったと言われている。90年以降に起こった社会的、経済的環境の変化によって、現在の製造業に従事する人や電気関係の販売に従事する人の中には社長を夢みる人はほとんどいなくなった。しかし社長になる夢を持たなくとも何々をやってみたいという願望は誰しもが持つ。願望という夢を持てる人々は前に進める。
言い換えれば、夢を持てなければ前に進まないということになる。
一年の計は元旦にありと古来、言われてきた。一年の計とは現実味を帯びた夢であるとも言える。やってみたいことややってみたいといつも日常に流されて、結局忘れていたことを思い出す。今年こそはと一念発起することは、新しい年を迎えた新年にふさわしい現実的な夢である。
電気部品や制御コンポ業界で活動している販売員はどんな夢をみて一念発起したのであろうか。商品のことやユーザアプリケーションのことをもっと勉強して顧客の役に立ちたい、顧客とのパイプを太くしたい、客先開拓力をつけて顧客の数をふやしたい、という計を持ち一年のスタートを切った販売員が多かったことと思う。一念発起した販売員だったら、自分達の顧客である技術者達の夢はどんなことかと聞いてみたくなるはずだ。日頃はなかなかしにくい夢談義も、新年にはふさわしい話題となり、お互いに深く知り合う機会となる。
(次回は2月8日掲載)