今年のFA・制御機器流通市場を取り巻く環境は、東日本大震災とタイの洪水被害からの復興需要、生産の海外シフトが継続する中でも内需として見込める省エネ・新エネルギー関連および、社会インフラ関連需要に大きな期待がかかる1年となりそうだ。大型の期待商材が少ない中で、商社の個々の質も問われ始めており、社員教育の充実などで特徴ある商社づくりがさらに求められている。 東日本大震災から10カ月が経過し、FA流通のサプライチェーンは完全に元に戻ったが、受注は山から谷に急降下し、再び上昇に向かおうとしているのが現状だ。その上昇を支えている要因の一つが、皮肉なことにタイの洪水被害からの復興需要というのも、何か因縁めいた感じがする。しかし現状はこれが大きな受注増加につながり、膨らんでいた在庫を減らすことになった。一部の製品では、納期が間に合わないものも出ており、代替品で対応しているケースも増えている。
■円高で国内市場は縮小
また、大震災に伴う節電対応から省エネ関連市場も広がりを見せている。工場では装置や工程ごとの電力消費をチェックして無駄な電力消費を減らす取り組みが進み、ビルでも現状の設備では省エネ対応が難しいとして、これを機にリニューアル化を進めるところが急増している。こうした省エネ・節電意識の急速な盛り上がりは、FA流通業界にとっても大きな追い風と言え、この風を着実に売り上げに結びつける取り組みが重要だ。
しかし、急速な円高は企業の海外生産シフトをさらに加速させる結果に繋がって、国内のFA制御機器市場は縮小傾向にあるのも事実だ。1980年台の頃のような市場を大きく牽引する大型商材も少ない中で、一部の商社を除けば海外市場への足がかりを築けないところがほとんどで、売り上げを確保するには限られた日本市場でのパイを獲得していくしかなくなっている。
顧客から選ばれる商社として勝ち残るためにも、改めて社員の営業・技術教育を行い、個々の商社がアピールできる特徴ある商社づくりが必要といえる。
■先行投資はしっかりと
新興国も賃金をはじめコストの上昇が続いていることや、品質向上のためにも自動化・省力化などへの投資が必要になってきている。再び、市場が増加に転じる可能性は十分あるだけに、そのときに備えて、先行投資だけはしっかりしていく必要がある。