中部地区の生産状況は、タイの洪水の影響により、一時的に落ち込んでいたものの、緩やかな増加に転じてきている。自動車関連は、洪水による部品の供給制約が解消されてようやく軌道に乗ってきたところで、生産は上昇しつつあり、自動車部品は、国内完成車メーカーの稼働減から一時的に下がったものの、海外需要が引き続き堅調なことに加え、国内完成車の生産増から、こちらも緩やかな上昇傾向にある。
工作機械は、海外向けを中心に弱い動きがみられるものの、引き続き国内向けの需要に支えられていることから、全体としては横ばいになっている。
こうした状況下、中部地区の商社では、顧客のニーズを的確にとらえ、それらにきめ細かく応えていくために、情報収集と情報発信に力を入れようとしている。長引く不況により、商社は単に物流機能を有するだけでは存在価値がなく、待っていてもモノは売れないということで、顧客をまめに訪問して、そのニーズを上手く聞き出すのが営業マンの重要な任務になっている。もちろん、カタログを持って行くだけでは買ってくれないので、それらを組み合わせてこんなシステムが組める、当社ではこんなことができるといった提案をすることが大切だ。
SEの増強が不可欠
そうした提案を行うには、システムに詳しいSEの増強が不可欠で、顧客の海外進出に合わせて、海外の営業所にSEを派遣しているところもある。
情報発信としては、製造業エンジニア向け情報サイトに取扱商品を掲載したり、各種自動省力化機器メーカーなどが製造する膨大な製品情報、価格情報をインターネットで共同発信したり、最新のメカトロニクス製品情報を満載したインターネット用の新商品ニュース媒体を発行したり、取扱商品をわかりやすく解説したモノづくりに関する情報誌を顧客に定期的に送ったりして、顧客フォローに力を入れている。国内の既存設備の需要は頭打ちなので、新商材・新市場の開拓も欠かせない。環境、新エネルギー、燃料電池、スマートグリッドなど将来性のある分野には顧客からの要望も高く、各商社も注目している。農業の工業化などのアグリビジネスも狙い目のようだ。
円高が進む中、国内企業の海外進出に合わせて、商社でも海外に拠点を設け、営業サポート、アフターサービスなどの体制を整えていくのが当然の動きとなっている。特に成長著しい中国・韓国・台湾・東南アジアに拠点を設けているところが多い。今後はインドなどが注目されており、拠点の設置を検討しているところもあるようだ。
コストダウンと円高に対応するため、海外から部品などを調達する場合には、技術力のある商社に話が持ち込まれることが多いようだ。一方、国内生産品もコスト削減、技術開発に注力しており、海外品を輸入した方が効率の良い製品と、国内で生産した方が性能的、コスト的に優れる製品との二極化が進んでいる。商社ではこれらを的確に見極めて、顧客の要望に合うように、輸入品、国産品をそろえてシステムに組み込んでいく必要がある。海外生産によって品質が落ちないように、日本から丸ごと持っていくような重要な設備もある。
前向きに挑戦する姿勢を
リーマンショックの頃から、危機感を持って、SEの育成、社内体制の再構築、営業強化などを行ってきた商社にとっては、昨年の大震災、欧州危機、タイの水害などもそれほど荒波を受けずに乗り切れたことであろう。今年は景気が徐々に回復するという見方が多く、商社にとっても、成長していくために、前向きに挑戦していく姿勢が求められる。