●520億円市場を形成
配線接続機器市場は、NECAの制御用専用機器出荷統計によると、10年度は同22・4%増の1254億円と大幅に回復した。11年度は、3月に発生した大震災の影響が懸念されたが、第1四半期は同4・5%減の296億円、第2四半期同3・8%増の344億円、第3四半期同0・9%増の323億円と、震災後の特需もあり堅調に推移している。さらに昨年の秋頃から、タイの洪水の復旧・復興に向けた需要が活発になっており、今年に入って特需とも言うべき、大きな受注が入ってきた端子台メーカーもある。
NECA会員以外も含めた推定市場は、端子台が約450億円、ケーブルアクセサリー・配線ダクト類が約70億円と見られ、合計で約520億円市場を形成している。
昨年の後半から半導体・液晶製造装置分野が低調に推移しているが、自動車・工作機械関連が堅調に推移しており、落ち込みをカバーしている。また、全体的に制御機器関連は好調だが、電子部品関連の需要が低調になっている。
新分野として、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー分野で、具体的なシステムや製品が開発、発表されており、今後大きな需要分野になることが予想される。加えて、節電対策や省エネ対策に伴い、各種のエネルギー管理システムなどが登場しており、こうした分野の伸長も期待される。
素材価格の上昇も見られ、エンジニアプラスチックは昨年10%前後の値上げが実施され、銅相場も昨年暮れから再び上昇しており、現在はトン710円まで値上がりしている。今後、さらに価格が急上昇するような事態になれば、製品値上げの検討も行わざるを得ないとしている。
円高基調で推移する為替動向も注視されている。
端子台は、市場で大きなウエイトを占めるプリント基板対応タイプで、インテリジェント化、薄型化、省スペース化、狭ピッチ化が進んでいる。
配線作業の省力化につながる圧着端子とバネを一体化したタイプは、各社独自のノウハウで製品展開を図り定着している。バネ式端子台は、長期間の振動にも強いため(振動によるネジの緩みがない)、公共の輸送・交通設備にも採用されている。また、欧州式の圧着端子を使わないタイプも浸透している。作業性の良さと安全性などが大きなポイントといえる。国内メーカーでもこのタイプを品ぞろえしており、主流になっている。
●防爆タイプも注目
コネクタ接続タイプでも、小型・軽量化が進展し、コストダウンも進んでいる。防爆構造タイプも注目されている。現場でのアース工事が不要で、非本質安全端子側の配線は電源2本とコネクタだけのため、配線工数の大幅削減につながる。国内の防爆規格やNK規格、さらに欧州のATEX、米国のFM、カナダのCSAといった海外規格にも対応している。
各端子台メーカーでは付加価値の高い新製品開発に注力しており、特に、省配線化ニーズに応えて、コネクタ化や複合化(ハイブリッド)などの工夫を行っている。省配線化は、盤と盤、盤と機器、機器と機器の間をつなぐ上で作業やメンテナンスの工数削減につながることからニーズが高い。
●配線作業効率が高い
配線作業の省力化を図る点からスタッド形端子台の需要も伸びている。スタッド形端子台は、配線作業が容易で作業の省力化が図られるとともに、配線作業効率が高いのが特徴である。加えて、挟み込みなどの接続不良を未然に防止できる効果もあり、ネットワークのオープン化が進む中で、こうした省配線機器のウエイトが年々高まっている。
安全確保と作業の効率化を両立させた製品では、圧着端子と端子ねじを正常な位置関係に規制する配線脱落防止機能を備えた端子台が、工事現場などで配線脱落事故を未然に防ぐものとして注目されている。
一方、IEC規格に準拠し1000V定格の高耐圧仕様と、感電事故を未然に防止する安全構造を備えた高耐圧端子台もラインアップが充実し始めている。
ハイブリッド端子台では、電子部品などを搭載し付加価値を高めたものも多い。サージアブソーバー素子やリレー、スイッチ、断路器、ヒューズ、LEDなどを搭載したものが一般的で、実配線削減でスペース効率の向上を図るため、リレーやサーキットプロテクタ、ヒューズ、スイッチを中継端子台に搭載し1ユニット化を図ったタイプや、中継端子台が不要な機能搭載型リレーターミナルも着実に市場を拡大している。
メンテナンス性では、電流容量の区分や回路のグループ分けなどに端子台のカラー化で対応するケースが増えている。
●工数が約5分の1に
こうした中で、既設のPLCに接続されたケーブルをつなぎ替えることなく、新設のPLCに置き換えることが可能なPLC変換アダプタや、PLC対応の中継コネクタ式端子台も伸長している。PLC変換アダプタは、工数が約5分の1に低減できることが特徴となっている。
端子間ピッチ8ミリという、スペース効率の向上を図った断路端子台も各種のプラントで採用されている。
ケーブルアクセサリーや配線ダクトは、配線接続機器を陰で支えているが、最近では端子台、コネクタの需要増と比例するように用途拡大が進んでいる。特に、ケーブルアクセサリーは、電子機器や自動車向けを中心に堅調に推移している。素材も樹脂に加え、ステンレススチール製のケーブルバンドなど高付加価値製品も数多く登場し、屋外などの過酷な条件下での使用が可能なことから、再生可能エネルギー分野や鉄道車両分野、船舶・航空機分野など、新しい市場に向けての営業展開が行われている。また、ケーブルと取り付けベースを一体化した製品も注目されている。
この分野でも環境対応が取り組まれており、環境負荷の大きい有害物質の排除に向けたエコ製品の開発や再利用できるタイプの開発が進んでいる。
配線接続機器市場は、幅広い分野にわたっており確実な需要に支えられている。国内外のメーカーが活発に営業を展開している。新興国向けには機能を限定したローコスト品も開発されており、高機能タイプとローコストタイプの2本立てでの製品展開が行われている。
今年は電力の買い取り制度が本格化する見通しで、制御盤・配電盤業界ではこれに伴う新しい市場に期待しており、配線接続機器への波及効果も出てきそうだ。