製品的にほぼ完成された領域に達していると見られている電磁開閉器であるが、昨今の省エネ、環境負荷の低減など、周辺トレンドの変化を背景に製品開発が行われている。共通した傾向は、小型化、省エネ化、グローバル化対応、省配線化と配線作業性の向上、環境負荷の低減、長寿命化、安全対策などに重点が置かれている。
なかでも小型化への取り組みが意欲的で、最近発売された製品では12Aフレーム以下の小容量タイプで、45×48×49ミリの形状を実現したものが発売されている。制御コイルと電磁石の改良で、小型で低消費電力駆動の構造を実現しており、制御盤の小型化と駆動電力の削減を図れる。しかも交流(AC)、直流(DC)制御品とも同サイズとなっており、ほかの機器との接続をしやすくなり、制御盤設計の効率もより良くなる。
小型化・低消費電力化は、環境配慮と素材の節約にもつながる。
電力消費量の削減は、CO2削減により環境対策の向上にもつながり、電磁開閉器の小型化によって、電磁開閉器の材料と盤筐体材料の削減によるコスト低減にも貢献する。
環境面では、直接環境面に影響を与えるリサイクルに適さない素材の使用中止、脱クロム、鉛ハンダの不使用、リサイクルを容易に進めるための使用材料名の表示といった取り組みも浸透している。
省配線化と配線作業性の向上では、端子の配線ねじを外さなくても配線できるようにしたり、バネを使って仮止めが容易にできるようにしたりと知恵を絞っている。この端子構造は、日本と海外では異なっていることから、使われる地域の実情に応じて選択できるように、棒、先開き、丸型、スプリング、ファストンなど多彩に用意している。
作業性の良さでは欧州タイプの圧着端子を使わないで、棒線、より線がそのまま使用できる接続方式が有利と言われているが、日本では電力や官公庁向けで、圧着端子の使用を求めているところが多く、納入先ごとに仕様を変えているのが現状だ。
配線数を大幅に削減
省配線化は、電磁開閉器の主回路の高さを統一することで、専用ブスバーによる一次側渡り配線ができるようになっている。これにより、配線数が大幅に減らせ、配線作業時間短縮と誤配線の防止につながる。さらに、可逆型電磁接触器に、電気的インターロック用配線を内蔵したタイプも開発されており、インターロック配線が不要になるほか、スペースもほとんど同じで済むため、内蔵スペースを有効に生かせる。
安全対策では、端子部に不用意に接触しないように感電防止構造を採用した製品が一般化、不用意な接触によって誤始動したり、異物が本体に侵入したりしないように保護カバー装備も汎用化している。さらに、制御回路と主回路の誤配線を防ぐために、それぞれの端子色を変えることで分かりやすくしたり、主回路と補助回路の端子配線の干渉防止と作業性向上へ端子配列を工夫した設計も行われている。電磁開閉器の接点溶着が発生した場合でも、安全開離機構(ミラーコンタクト)として、補助接点が確実に作動する機能も内蔵しており、事故の防止を図っている。
長寿命化が格段に進む
長寿命化もこのところ格段に進んでおり、電気的開閉耐久性は200万回、機械的開閉耐久性は2000万回を標準仕様にしている製品が多い。ほとんどの用途ではこのような開閉を行うことは少ないものの、ホイストクレーンやガソリンスタンドの給油機などは開閉頻度が高い用途となっている。
電磁開閉器は、機器に内蔵して使用されることから、実際に使用される国に対応した規格の取得が求められる。JIS・JEMやIEC、VDE・DIN、BS・ENなどをはじめ、UL、CSA、CE、TUV、GB・CCCなどが代表的な規格として取得や準拠している製品が多い。
市場のグローバル化が著しいだけに、この傾向は国際標準化の一環としてとらえられているが、規格によっては設計変更が必要なことから、販売地域に限定した設計にすることで、コスト低減を図ろうとする動きもある。
モータブレーカに注目
電気回路には、配線用遮断器、電磁接触器、サーマルリレーが使われ、短絡事故からの電線保護、電動機の過負荷保護などを行っているが、これの省スペース化と省配線化を実現できるモータブレーカの動向も注目されている。配線用遮断器、電磁接触器、サーマルリレーの代わりに、モータブレーカと直流低消費電力型の電磁接触器を採用することによって取り付け面積を、従来の3分の1まで削減することができる。
モータブレーカと電磁接触器を専用パーツで一体化しているために、従来の配線用遮断器と電磁接触器を電線1本1本で配線する作業も不要になり、配線時間は従来の半分に削減することが可能になるなど、トータルコストダウンに効果を発揮する。
電磁開閉器の今後の技術トレンドとしては、監視機能や通信機能の搭載、更なる省配線化、メンテナンス性や安全性の向上などが研究されている。安全性の向上では、2重回路化が検討されているが、インバータ化で解消できるという面もあり、コスト比較の面も出てくる。監視機能や通信機能の搭載も同様にコストとの比較が挙げられる。
電磁開閉器の付加価値を高めながら、より使いやすく信頼性の高い製品開発への取り組みが続きそうだ。