ベテラン技術者の海外流出が続いている。昔は、金曜日夜の韓国行き航空便は日本の技術者が大勢搭乗していた。韓国で仕事をして、日曜日夜に帰国する。現在は、定年退職者が中国などの新たな職場に就職し技術指導をしている。この流れは、日本の製造業が再興しない限り止まりそうにない。
十数年前のことである。60歳の定年までもう少しという気持ちを振り切って台湾に渡った技術者がいる。日本で培った技術力が認められて数千万円の生産設備の選択から導入の決裁まで行ってきた。所得も日本より増えた。現在も求められて顧問に就き指導している。
彼は1年に数回、新規設備購入のため日本にある機械メーカーを訪問し、打ち合わせをしていた。品質もさることながら、日本人という意識がそうさせるのであろう、日本製の採用にこだわる。使用者の立場から、日本メーカーに提案することも忘れない。日本企業の成長を願っている。
グローバル化の中で、海外に糧を求める技術者が今後も増えようが、彼のように祖国に愛情を持ち続ける人は多い。政府が海外の中堅企業に勤める技術者のネットワークをつくり、年数回は日本に招聘し中小製造業との意見交換会を開催して欲しい。日本の中小製造業の輸出促進につながるのではないか。