産業用筐体や配電盤類の耐震対策は阪神・淡路大震災に比べ大幅に向上していることが東日本大震災で証明された。施工の改良と筐体自体の振動吸収力が高まったことにより、データセンターのラック倒壊が大幅に減少し、キュービクルや配電盤も津波による損壊発生の方が大きかったもよう。地震の揺れによる倒壊対策は阪神・淡路大震災の教訓が生きたといえる。
被災県にあるデータセンターの中には障害が発生せず、非常用自家発電に切り替え障害もなくサーバが安定稼働した。阪神・淡路大震災では多くが倒壊した。
ラックメーカーが耐震設計で筐体の強度を高めたほか、揺れを吸収する構造の製品を阪神・淡路大震災後に相次いで発売した結果である。また、ラックの耐震対策として取付金具や床面に工夫を講じるようになった。もっとも、取付金具が外れ倒れたラックも少なからずある。
キュービクルや配電盤も地震による損害は少なくなった。むしろ津波で流されたり、使用不能状態が多く発生した。「地震の揺れで倒壊したものより、津波が原因のキュービクルや配電盤の復旧受注が多かった」(茨城県の配電制御システムメーカー)。
キャビネット工業会や日本配電制御システム工業会の取り組みも奏功している。
キャビネット工業会は「金属製汎用キャビネット規格」を2007年に改正した。入力地震波加振試験では加振波形を兵庫県南部地震波としている。加振加速度は0・8Gである。正弦3波加振試験も規定。この規格以外にも施工対策などの注意を呼び掛けている。
日本配電制御システム工業会は2000年に「配電盤類の耐震試験実施報告書」を発行し、耐震対策を強化している。さらに、今年度事業の中に、阪神・淡路大震災直後に作成の「配電盤類の耐震設計マニュアル」の見直しを決定している。審議に当たり、東日本大震災による配電盤類の損傷の原因を調査し、反映させるという。
産業用筐体や配電盤類は耐震性がかなり高まっている。残る課題は、施工方法といえそうである。