エネルギー利用の効率化に向けてスマートグリッド構想や、新たなエネルギー源である自然エネルギー活用への機運が国際的に高まるなかで、直流(DC)給電の活用に向けた機器の標準化が取り組まれている。高電圧を中心に交流(AC)給電が主流のなかで、直流の有する利点も多く、今後のエネルギー政策の中で、大きな技術のウイークポイントとなりそうだ。 直流給電は製品への電力供給を一般に利用されている交流ではなく直流で行おうというもので、スマートグリッド構想での電力送電や、家庭・工場・ビルへの配電などで研究されている。
直流給電のメリットは、一般に行われている交流―直流変換の回数を減らすことで、エネルギーの損失を減らせることだ。
工場やビル、データセンター、家庭などでは、商用電源から機器での使用までの間に交流―直流の変換が3回行われており、その変換ロスは電力の20%程度あると言われている。
直流給電はこの変換回数が1回で済むため、省エネ、CO2削減などに繋がり、再生可能エネルギーである太陽光、風力、地熱など直流発電の増加傾向にもマッチングする。
ただしここで問題となるのは、交流では200Vや400Vといった高圧で使用される機器が普及しているのに対し、直流では6Vや12Vといった低圧で使用されていることから、直流高圧機器の安全基準や試験方法が確立されていないことだ。
国際的にも、直流高圧機器の規格は制定されていない。
日本電気制御機器工業会(NECA)では、2011年度の経済産業省の国際標準開発事業としての委託を受けて、NECAが国内審議団体になっているIEC/TC23/SCJの「IEC61058―1機器用スイッチ」規格に対して、「直流給電方式に対応するための一般要求事項」を追加する標準化案作成活動を開始。
工業会内に直流国際標準化委員会(委員長=澤孝一郎慶応義塾大学名誉教授)を設置して「直流給電方式に対応する制御機器の安全性に関する標準化」で、会員企業8社のほか、有識者なども参加し、スイッチの直流開閉で検討すべき評価基準や関連規格などの活動を展開してきた。
この結果、直流開閉で想定される事象として、「アーク継続」に最も影響を与えるとして、この部分にスポットを当てた評価基準の明確化を行っていくことに取り組む。
具体的課題は、規格上では、「アークの定義」、「試験方法とアーク継続時間測定方法の標準化」、「判定基準」など、スイッチとしては「アーク遮断の有効な方策の検討」、「アークが外部に漏れない構造の検討」、「アークによる接点の劣化防止」などで検討していくことになった。
同委員会では、12年度も継続して委託を受けられれば、試作品の設計・製作を行って試験を進める計画で、これを機に、日本発の直流給電の国際標準化提案を行うべく活動を継続していきたいとしている。