戦場では想像して行動を起こすことは禁じられている。戦場において唯一、想像力という能力が必要になるのは地形感覚だと言われる。地形感覚だけは想像力を駆使して全体を鮮やかに映し出さねばならないから必要だと言うのである。農業や林業などの土地を知るにはそれほど広大な土地でないから、短時間でかなり正確にその土地を知ることができる。
しかしクラウゼヴィッツのいた1800年代の戦場はかなり広大な地域で戦っている。この広大な地域をことごとく通観することはできない。その上、地上にある物は絶えず変わっていく。このような極めて困難な状況を克服して、作戦行動を起こすには、研ぎすまされた地形感覚が必要だとクラウゼヴィッツは言う。地形感覚の大半は想像力という働きによるところが大きい。想像力の働きによって、心の中に敵の全軍の動きを連想し鮮やかに写し出すことができる。
プロイセン軍参謀のクラウゼヴィッツは、敵将ナポレオンが天才的な地形感覚で、プロイセン軍の主力が広大な戦場のどの地点に現れるかを鳥観できるほどの想像力をもっていたので、大砲を中心とした火器をいちはやくその地点に移動させ勝利したと分析した。プロイセン参謀本部は何度戦っても負けるナポレオンの天才能力対策に数年を費やした。最終的にはドレスデン・ライプチヒの戦いで、天才ナポレオンに勝利した。リベンジを試みたナポレオンを再びワーテルローで敗り葬った。戦場において想像力は邪魔で有害なものであるが、地形感覚だけは想像力の働きが必要であるとクラウゼヴィッツは言う。
営業の戦線ではどうか。営業の現場は戦場のような単純な現場と違い、極めて複雑である。したがって、想像力は極めて必要な能力である。戦場における地形感覚に相当するものとして、製造現場では様々な機械や機器のレイアウトの感覚を持つことである。業務現場ではセキュリティー画像・計測・通信などの機器のレイアウト感覚を持つことである。それぞれの現場は広大で複雑である。したがって短時間で具体的に把握することだ。そこで仮説の活用と想像力を駆使した情報収集を試みて、より具体的な現場の把握をする必要がでてくる。
一般的に仮説は経験と学習から生まれる。生まれた仮説を有効に活用するには経験と学習情報の二つを持ち合わせねばならない。昨今、経験不足を補うために、部品・コンポの営業ではアプリケーションなどの仮説を勉強して顧客に売り込もうとするが、顧客からはYes、Noの反応しかもらえない。
製造現場や業務の現場の様々な情報を入手しようにも現場のレイアウト感覚がないために、アプリケーションという情報提示に終始してしまうからだ。それに販売員にとって役に立つおもしろい情報を入手するには、顧客から学んだ経験がないとつながった質問が思いつかないからだ。
顧客を訪問するたびに、顧客に関心を持ち観察し、疑問があれば質問して、傾聴する。そして記憶やノートにメモをする。そのような営業の基本動作の連続で経験を積むことが仮説の活用には必要なのである。
わかった知識が点在してくれば、仮説を持って顧客に臨んだ時に隠れている情報が見つかるような質問に発展させられる。つまり点と点がつながって、広大で複雑な製造や業務の現場が想像できるようになる。そうすればさらに新たな経験に出合って、さらに高度な仮説を立てることができるのである。
(次回は4月11日付掲載)